「彼、時々、癇癪(かんしゃく)を起こすことがあるんです。最初、わたしに至らないところがあるからかなと思っていたのですが、シェアしている後輩女性の彼女に聞いてみると、どうやら彼女相手にも癇癪を起こしているみたいで……。それを聞いたとき、『あっ、わたしだけではなかったんだ』と安心できました」(前出のノリコさん)

 2人の女性からの愛を受け、1人で2人の女性に愛を与える“シェア彼氏”は男性側にとってもメリットが大きい。

「信頼できる2人の女性から、いろいろ親身になって自分をみてくれるので男としてどう女性と向き合えばいいのか。それをじっくり考えさせてくれます」(ノリコさんと後輩女性のシェア彼氏男性)

 ノリコさんたち3人の取り決めで、もしどちらかの女性と1対1での交際を望む場合、再度、話し合いの機会を設けどちらかに決めることにしているという。ただし、現状では“シェア彼氏”を介した女性2人との交際関係が崩れることはなさそうだ。

「1対1の恋愛だと、彼氏にまつわる不満を誰かに相談しても、しょせん、“ひとごと”でしかありません。でも、この形態だと女性2人でひとりの男性を磨いているという感覚です。精神的にも非常に楽なんです。この楽さは何物にも代えられません」(ノリコさんと彼氏をシェアする女性)

 こうした“シェア彼氏”が増えた背景には、都市部に住むキャリア志向のオーバー35女性たちの多忙さが背景にある。日頃の激務からとても男性と出会う機会がない。シングルマザーとして子育てもある。恋愛を楽しみたいが苦労はしたくない……。そこで友人女性同士、複数の女性が、好意を持つ男性ひとりとの交際、つまり“グループ交際”の発展系が、この“シェア彼氏”といえよう。

「わたし以外の交際相手女性は、ライバルではなくわたし自身のカウンセラーです。それは相手女性からみればわたしも同じです。男性との深い絆と女性同士の固い結びつきも得られます。1対1の恋愛ではとても得ることはできないものです」(冒頭部で紹介したノリコさん)

 ワークシェアリング、シェアハウス、カーシェア……、今、世間では、ひとりですべてを負担するよりも、“シェア”により負担を分かち合う流れが当たり前のものとなりつつある。この独身者同士による複数女性とひとりの男性の組み合わせもまたアリかも知れない。

※本文中、カタカナの名前は仮名です。

(フリーランス・ライター・秋山謙一郎)