2015年5月にとらえた竹田城。今でも年に約250日は撮影している(写真:吉田利栄さん提供)
2015年5月にとらえた竹田城。今でも年に約250日は撮影している(写真:吉田利栄さん提供)
アマチュア写真家の吉田利栄さん。15年6月、アメリカのノース・コヨーテ・ビュートで(写真:吉田利栄さん提供)
アマチュア写真家の吉田利栄さん。15年6月、アメリカのノース・コヨーテ・ビュートで(写真:吉田利栄さん提供)
かねてから興味があったアメリカの秘境、ザ・ウェーブ。美しい波模様を描く砂岩層だ(写真:吉田利栄さん提供)
かねてから興味があったアメリカの秘境、ザ・ウェーブ。美しい波模様を描く砂岩層だ(写真:吉田利栄さん提供)

 雲海に包まれた姿が美しい、兵庫県朝来市にある竹田城跡。ここ数年で「天空の城」「日本のマチュピチュ」として有名になり、多くの観光客が訪れるようになった。そのきっかけを作ったのが、同市のアマチュア写真家、吉田利栄(としひさ)さん(83)が撮影した写真だ。

 8年ほど前、兵庫県庁を退職し、趣味の写真を楽しんでいた吉田さんに、朝日新聞から「雲海に浮かぶ竹田城を撮られないか」という依頼が舞い込んだ。3日間かけて撮影して送ると、すぐに掲載された。それからテレビや新聞、雑誌などで取り上げられて訪れる人が増え、2014年度の入場者数は約58万人となった。

 吉田さんはブームになってからも、年約250日は竹田城を撮り続けている。約5キロ北にある自宅から竹田城を見て、良い写真が撮れそうならすぐに車で出発する。被写体が同じでも、季節や時間、撮影条件によって、また違った表情を見せるからだ。

 パソコンのハードディスクには、おなじみの雲間に浮かぶ姿、ライトアップされた姿、星空をバックにそびえ立つ姿、夜明け前の幻想的な姿など、様々な竹田城の写真が保存されている。それらは、「地元へのささやかな貢献」として、市や企業から依頼があれば、無償で提供している。市のパンフレットや飛行機、電車のラッピングなどに使われ、多くの人に竹田城の姿を伝えているのだ。

 高校時代に、小学校の同級生からおもちゃのカメラをプレゼントされたのをきっかけに、写真を撮り始めた。県庁に入ってからは、5、6カ月分の給料をはたいてアサヒペンタックスのカメラを買った。60年以上かけて撮りためた写真は40万枚を超すという。

 興味があるものを撮るためならフットワークは軽く、これまでに訪れたのは中国やアメリカ、ニュージーランドなど約45カ国。15年6月には、長男と共に、アメリカのユタ州とアリゾナ州の境界近くにある秘境、ザ・ウェーブにも出かけた。波のような模様を描く砂岩層が有名だが、その区域に入れるのは、1日20人のみ。吉田さんは現地で毎日行われる抽選会に参加し、2日目に幸運にも権利を獲得した。

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