橘木教授も、親族が政治家であれば子どものころから政治が身近な存在であり、さらに実際に世襲した際には周囲の支持者が「うまく守り立ててくれて、良い政治家に育ててくれる可能性に期待できる」(同書より)といった世襲の“メリット”を指摘する。

 しかし、冒頭に述べたように、ほかの候補者より圧倒的に選挙に有利な状況であるため、「意欲が高くて有能な人を議員から排除していること」にもつながってしまうと橘木教授は言う。また、政治以外の世界がわからない、素養や適性がない、などといった「無能のエリート」が世襲してしまう可能性も高い。

 こうした問題点に対して世襲議員を完全に排除すべきとの声もあるが、憲法14条(法の下の平等)に反する可能性もある。

 この点で橘木教授は、次のような海外の選挙制度を紹介する。

「民主主義創設の国であるイギリスでは、世襲の人が国会議員選挙に出るときは選挙区を別の区にしなければならない、という規則がある。これは明らかに世襲の人が有利になることを排しているし、その地域の政治が特定の一族で支配されることを排している制度であり、日本も導入してよい案と思われる」(同書より)

 なにかと頭ごなしに批判されがちな世襲問題。しかし、“世襲”そのものを問題視するのではなく、現状の日本の政治制度における世襲問題をどう改善するかを考える必要があるのかもしれない。第2次安倍内閣では閣僚の半数が世襲議員だったことが話題となったが、安倍政権には、こうした政治制度改革も「粛々と」進めてもらいたいものである。