ビギニ姿でボルタリング!
ビギニ姿でボルタリング!
カフェから虹が見える!
カフェから虹が見える!

 ビキニ美女たちがキャーキャーいいながらしがみついているのは、ボルダリング(最低限の道具で岩を登るフリークライミング)練習用のクライミングウォールだ。

 実はここ、都内にあるカフェの店内である。4種のオリジナルブレンドコーヒーを提供する「cafe691」。オーナーの沖山雄一さんは、自らのフリークライミング好きが高じてカフェの中にクライミングウォールを作ってしまった。もともと「cafe691」は86年続く「沖倉商店」を改装し、2012年5月にリニューアルオープンしたものである。

 このカフェに行くには所用50分。ただし、調布空港から三宅島行きの飛行機に乗って、である(※注)このカフェは三宅島にあるのだ。カフェは阿古漁港を見下ろす高台の上にあり、青い海を見ながらコーヒーを飲むのは最高の瞬間だ。

 商店時代は買い物に来てすぐ帰ってしまったお客さんが、今ではカフェでゆっくり時間を過ごしている。島らしい時間が味わえるとリピーターは増加する一方である。写真のビキニ美女たちも、毎年ドルフィンスイム(三宅島や御蔵島近海ではイルカがいる海で泳ぐことができる)に来た折に必ず店に立ち寄り、ビキニ姿で同じポーズの写真を撮ることを楽しみにしているリピーターなのだという(いつもお店にいるわけではない。あしからず)。

 とはいえ、カフェ誕生の道のりは平坦ではなかった。1983年、三宅島の雄山が噴火する。このとき、沖倉商店は押し寄せた溶岩に埋まってしまった。

 その後、同じ阿古地区内で店は再建されたが、2000年にふたたび雄山噴火。三宅島全島民は島外に避難せざるを得なくなった。

 当時、沖山さんは東京にいて、大手の広告代理店で売上MVPを何度も獲得するほどの凄腕営業パーソンだった。島外避難してきた沖山さんの父は、長い避難生活の中、大動脈解離を患い、手術・入院することになった。それでも父は「島に帰ってまた店をやる」と宣言。

 病状が回復したとしても、父の体力で店が再開できるのだろうか? 不安に思った沖山さんは、2005年に会社を退職。家族を都内に残し、両親と島に戻り、店の再建に取り組む。そして2010年4月には4代目として店を取り仕切ることになったのである。ちょうど、沖山さん自身も広告という変化の激しい世界での生活に疑問を感じ始めていたときでもあり、また、祖父や父たちが受け継いできた店への思いもあったのだ。

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