「第10回あなたが選ぶオタク川柳大賞」の入賞作品(インターリンク提供)
「第10回あなたが選ぶオタク川柳大賞」の入賞作品(インターリンク提供)

 自分の好きなものや興味のある分野に夢中になってしまう、いわゆる“オタクな人たち”の日常を垣間見られる川柳がある。それが、株式会社インターリンク(本社・東京都豊島区)が開催する「オタク川柳大賞」だ。10回目となる今回、集まった力作は1万6183句。その中で大賞である「ネ申de賞」に選ばれたのは、次の句だ。

「壁ドンを やってくれるの ルンバだけ」(ぴんくのかば:40代)

 女性があこがれるシチュエーションとして話題となった「壁ドン」。審査にあたった選者は、「ひとりぼっちの時間が長いであろうオタクの休日のワンシーンを見事に表現している。そして何よりも辛いのは、ルンバの壁ドンは、任務遂行中に壁に当たっているだけだということ」と評する。ツイッターでは「ルンバが居るだけマシ」という意見もあったという。そして惜しくも2位となったのは、

「二児の父 夜に見るのは 二次の乳(がわねり:20代)

 妻にとっては苦笑、もしくはイラッとしてしまいそうな句だが、選者は「子どもたちへの配慮として、お父さんが、二次元キャラクターの胸元を見るのは夜中になってしまうというのは、至極常識的な行動であり、家族の平穏な日常を守りたいという気持ちが伝わってくる」と擁護している。

そして3位にもは「壁ドン」に続き流行語が入った。

「ありのまま? 姿見せるの? 出来るかよ!」(少しも痛くないわ:40代)

 この句は声優の竹達彩奈さんが選ぶ「.moe賞」にも選ばれた。竹達さんは「ペンネーム“少しも痛くないわ”さんの、ありのままの姿を見てみたくなりました!(笑)」とコメント。他の選者も「川柳とペンネーム(少しも痛くないわ)を合わせた良いお手本」と評価する。声に出して詠むと、なおさら深みが出てくる句ではないだろうか。

 ちなみに4位は「減塩と 医者が言おうが ぱるる推し」(のるばすく:40代)、5位は「二次元の 嫁に貢いで 妻放置」(ガラス[弱]:20代)と、一般人には理解できないレベルとなっており、なんとも言えない「オタクくささ」が漂っている。

 このオタク川柳大賞、ここ数年は5000句から1万5000句程度の作品が寄せられるという。主催社の担当者によれば、「オタクの間で川柳は流行っていません(笑)」とのことだが、上位に選ばれた句は、どれも秀逸だ。「壁ドン」やってくれるルンバしかり、オタクの日常に思いをはせてはいかがだろうか。

(ライター・南文枝)