ハビエル・アギーレ氏との契約は解除された
ハビエル・アギーレ氏との契約は解除された

 日本サッカー協会は2月3日に緊急会見を開き、大仁邦彌会長はハビエル・アギーレ監督との契約を解除すると発表した。

 まさに、青天の霹靂だった。3日は午後3時から技術委員会が予定されていた。この場でアジアカップの総括がなされるだろうと予想し、正午過ぎに協会の広報グループに確認のために電話を入れた。

 その返事は「特にブリーフィングは予定していません。(JFAハウス3階にある)記者クラブで囲み取材があるかもしれないので、待機してはいかがでしょうか」というものだった。

 ところが3時過ぎ、午後5時から4階の会議室で会見を開く。出席者は、大仁会長と法務委員長の三好豊弁護士というリリースが流れた。技術委員会の報告なら霜田正浩委員長が出席すれば済む。大仁会長と三好弁護士が会見を開くからには、八百長疑惑に何らかの進展があったと見るべきだろう。記者クラブには、スペインのアス紙電子版が報じたように、アギーレ監督に召喚状が出され、25日にも事情聴取が始まるという噂も流れていた。

 3時過ぎは閑散としていた記者クラブも、4時過ぎると連絡を受けて集まった在京キー局のテレビクルーと新聞各社のカメラマンでごった返していた。そして5時から始まった会見では、契約解除を伝えるA4のリリースが配られ、大仁会長が記者会見に応じた。

 大仁会長によると、アギーレ監督の弁護士とは連日のように連絡を取り合っていた。しかし、2日夕方からコンタクトを試みたものの、なかなか連絡が取れず、深夜の12時過ぎにつかまったそうだ。

 そして、1月30日にバレンシアの予審裁判所が検察当局の告発状を受理したことが判明した。それを受けて、3日の朝9時から田嶋幸三副会長や原博実専務理事ら幹部と協議を重ね、契約解除を決断したということだった。

 今回の決断に際して大仁会長は、会見でこう語った。

「考えなければならないのは代表チームへの影響であり、われわれのミッションはロシアW杯の出場権を獲得すること。そのための予選は6月から始まる。告発状の受理でこれから捜査が始まり、起訴されれば裁判も始まる。できるだけ、W杯予選に影響が出ないようリスクを配慮する必要があり、契約を解除する結論に至った。代表の活動やW杯予選への影響のリスクを避けたい。今回の契約解除は八百長疑惑とは関係ないし、アギーレ監督の名誉にかかわること。事実の解明に全力を尽くしてほしい」

 大仁会長によると、3日の午後2時過ぎに自らアギーレ監督に契約解除の連絡を入れたという。成績不振以外の理由で、日本代表の監督が任期途中に契約を解除するのは前例がない。それだけ異例の出来事ではあるが、すでに決断された以上、それを尊重するべきだろう。

 問題は、3月に控えるテストマッチや6月から始まるW杯予選への準備である。一部には、アギーレ監督を招聘した原前技術委員長や霜田技術委員長の任命責任を問う声もあるが、いま彼らを解任してしまえば、技術委員会が崩壊し、新監督選びも座礁に乗り上げる。日本代表の強化に継続性を持たせ、さらにアンダー世代の強化や育成にも着手している現在の技術委員会を存続させるべきだ。

 アギーレ監督に話を戻そう。大仁会長も「強化は順調に進んでおり、その手腕を高く評価しております」と認めている。もともと、2002年と10年もW杯の1年前に代表監督に就任してベスト16という結果を残した。もしも、2年後に彼が無罪だったら、改めて監督就任のオファーを出すという手もある。

(サッカージャーナリスト・六川亨)