『終電ごはん』『遅夜ごはん』『カロリーひかえめ 夜9時ごはん』――。書店の料理本コーナーに、こんなタイトルの本が並ぶ。

 いずれも、仕事で夜遅く帰宅する人をターゲットに、サッと作れて低カロリーなレシピを集めた料理本だ。「夜ごはん本」とでも呼ぶべきこうした本は数年前から増えはじめた。今年はすでに10冊以上発売され、料理本の新ジャンルとして定着した。

 さきがけとなったのは、2007年発売の『おつまみ横丁』。料理本にしては珍しい新書サイズと、すべてのレシピが3ステップで作れる手軽さが受け、100万部を超える大ヒットを記録した。その後、「ごはん」に主戦場を移して、一覧のような料理本が続々登場。家飲み&家ごはんブームも手伝って、12年6月発売の『終電ごはん』(幻冬舎)がテレビドラマ化されると、盛り上がりはピークに達した。JR有楽町駅の真ん前にある三省堂書店有楽町店は、午後10時まで営業。実用書担当の高橋千絵里さんによれば、「場所柄、仕事帰りのOLやサラリーマンが多く立ち寄ります。タイトルが受けて『終電ごはん』はかなり売れました」。

 料理しながら見やすい大判サイズが料理本の定石なのに、「夜ごはん本」は『おつまみ横丁』にならったコンパクトサイズ中心。「通勤用のカバンに入れて持ち運び、帰りの電車で今夜のメニューを考えてもらう」というのが出版各社の狙いだ。

 差別化の試みも始まっている。「サッと作れて低カロリー」に加え、『深夜特急めし109』(主婦と生活社)は男性読者を意識し食べごたえ重視のレシピをそろえた。『夜にちょこっとココットごはん』(朝日新聞出版)は、女性に人気の器「ココット」に注目。ココットごと焼いたり蒸したりしてそのまま食べる、ごはんはSサイズ、スープはLサイズなどとココットの大きさを決めることで食べ過ぎを防止、などと活用法を提案している。

 帰宅途中の献立探しと言えば、「スマホでレシピ検索」が定番になりつつあるが、たまには小さな料理本を開いてみると、検索では出会うことができなかったメニューが見つけられるかも。

【主な夜ごはん本リスト】

2008年
『浜内千波の21時からの遅ごはん』(保健同人社)
2009年
『体にやさしい遅めの夜ごはん』(西東社)
2010年
『カロリーひかえめ 夜9時ごはん』(新星出版社)
2012年
『21時から作るごはん ローカロリーのかんたんメニュー』(講談社)
『終電ごはん』(幻冬舎)
『一人ぶんから作れるラクうまごはん』(新星出版社)
『あさこ食堂の一緒に食べたいおそごはん!』(ディスカバー・トゥエンティワン)
『夜9時からのほっこりごはん』(世界文化社)
2013年
『深夜特急めし109』(主婦と生活社)
『遅夜ごはん』(宝島社)
『みんなの夜9時ごはん』(新星出版社)
病気にならない夜9時からの粗食ごはん』(青春出版社)
『遅く食べても太らない おやすみ前のベジごはん』(家の光協会)
『もっとラクうまごはん』(新星出版社)
『行正り香の はじめよう! ひとりごはん生活』(朝日新聞出版)
『忙しい人でもおいしく作れる夜ごはん』(飛鳥新社)
『夜にちょこっとココットごはん』(朝日新聞出版)