●締め切りとはかならず存在するもの

 グッドデザインカンパニーでは定期的に社内ミーティングを行ない、各チームのデザイナーがプロデューサーに、スケジュールの共有をしています。

 チームごとにいろいろなプロジェクトを請け負うことも多いので、会社として「締め切りを守れているか」や、全体の段取りを把握するためのものです。

 ぼくの妻でもあるわが社のプロデューサーは達人といっていいほど段取りが得意なのですが、このミーティングでは戸惑うことがあります。締め切りはいつかと尋ねると、「わからない」と答えるデザイナーがいるからです。

「クライアントさんは、いつがラフデザインを提出する締め切りなのか、言っていなかったんです。だから準備はしているんですけど…」

 クライアントから締め切りを言われなかったから、締め切りがわからない、というのです。しかし、これではいけません。

 たとえば舞台のパンフレットの仕事だとしたら、公演当日には印刷物として完成していなければなりません。公演日がわかっていれば、たとえクライアントが細かく締め切りを言ってこなくても、逆算してわかるはずです。

「○月○日までに入稿しないと、印刷が間に合わない。それには、○月○日までにはクライアントからデザイン案の承認をもらわなければいけない。それなら、○月○日までにラフデザインを完成させよう」といった予測はできるはずです。

 身内の話を書きましたが、これは案外、よくあることではないでしょうか。相手が言ってくれないのならば、自分のほうから「○月○日締め切りでいかがでしょう?」と相談するクセをつけましょう。

 自分で勝手に決められることでもありませんから、相手は「いや、もうちょっと早くほしい」と言ってくるかもしれません。早めに進行することになるなら、早く知っておいたほうがいいに決まっています。

上司に頼まれた案件で、「いちいち締め切りについて相談できない」というものもあるでしょう。それなら「仮」でいいから、自分ひとりで締め切りをつくっておくのです。

 締め切りとは、相手が言おうと言うまいと「ある」ものです。それなのに「締め切りがわからない」という状態でいたら、段取りなどできるわけがないのです。

次のページ
「なる早」「今日中」という危険ワード