●地政学にも日韓関係にも理解

 経済人だけに、即断即決で行動も早かった。また海外での活動歴も長く、韓国の置かれた地政学的な状況も、歴代大統領の中では最も理解しており、オバマ米大統領も一目置く存在だったという。

 日韓関係の重要性もよく理解していた。李元大統領の兄である李相得・韓日議員連盟会長(当時)は、韓国企業が海外で資源開発やインフラ建設を行う際には、日本企業と協力せよと主張し、これに従わない企業に対しては、自ら説得に当たっていたという。

 そんな李元大統領が、2012年8月10日、韓国の大統領として初めて竹島に上陸した。それはなぜだったのか。

 実は、韓国の憲法裁判所が、慰安婦問題について日本と交渉しないのは「不作為で憲法違反である」との判決を下したことから、京都で行われた野田佳彦首相(当時)との日韓首脳会談で、「慰安婦に対し温かい言葉をかけてほしい」と懇願した。にもかかわらず、野田首相が応じなかったために、“対日強硬路線”に転じたのだ。

 タイミングが悪いことに、それまで日韓の橋渡し役を務めていた、李相得氏が逮捕・収監され、李元大統領を止められる人がいなかった。日本に対し理解を示してきた李元大統領が、竹島の一件以来、「反日」と誤解されるのは残念なことである。

次のページ
「革新系」に都合のいいように政府の組織改変に乗り出す