「出身を聞かれたら必ず『京都の福知山出身です』と言うようにしています。京都出身というと一気にハードルが上がりますから。福知山は本当に普通の田舎なんです。実は、亀岡出身の友人が京都市内出身の友人に『亀岡が京都を語るな』と言われていたことがありまして…。亀岡でそれなら、自分は絶対に“京都出身”なんて言えません」

 確かに宇治生まれの男性も「京都市の人に『京都出身って言うな!』と言われたことがある」と話してくれた。しかし、一方で「福知山と舞鶴?あれは京都じゃない」との発言も飛び出す。つまり、宇治のような京都市に近いエリアの人たちの中には、京都出身のプライドを微かに抱きつつも、“本当の京都出身者”の顔色を窺いながら生きている人もいるようなのだ。

 そうした意味では、北部の人は潔いのかもしれない。都道府県魅力度ランキングを発表しているブランド総合研究所の田中章雄代表も「北部の人は自分たちの住む場所を“京都”と思っていない」と語るように、もはや自分たちは「京都出身ではない」と割り切っている。だからもし移住するのならば、京都府は「都」と「田舎」がはっきりと分かれており、自分はどちらが向いているのか、事前によく考えた方がいいだろう。

●京都でも東京みたいな暮らしができる? 「もし京都が東京だったらマップ」

 さてそうした前提を理解したうえでも京都に憧れる人は多いと思うが、実際に住むとどんな暮らしが待っているのか。

「意外と東京と変わらない暮らしができますよ」

 こう語るのは、東京出身で京都市内に移住した30代の女性。彼女が「街がコンパクトで暮らしやすい」「普通にスタバもラウンドワンもある」と話すように、東京と変わらない暮らしをするのは十分に可能らしい。

 また京都というと和食のイメージが大きいと思うが、普通にパン屋も洋食屋さんもたくさんある。実は京都、1世帯当たりのパン消費量は全国1位で、牛肉消費量も全国2位(総務省統計局・家計調査2014年)。毎日ヘルシーなおばんざいばかり食べているわけではないのだ。一方で京都らしさを感じるのは、「飲み会の2次会は鴨川でお酒を買って飲む」(京都市在住の女性)ことだろう。

 そんな魅力的な京都も、東京と比べると家賃は安い。単身向けなら、東京新宿区で9.2万円平均のところ、京都市の中心部にある中京区なら5.6万円と、3.6万円も安い。ファミリー向けでも京都市山科区だと7.8万円で住むことができる(不動産情報サイトHOME’S平成28年7月時点)。とはいえ、平均給与も全国5位(平成27年賃金構造基本統計調査)と高額。地方と都市のいいとこ取りができるのも京都の魅力といえる。

 そんな東京っぽい暮らしも継続させつつ京都に住みたい人におすすめなのが、『もし京都が東京だったらマップ』だ。このマップを考えたのは、前出の京都移住計画の岸本さん。岸本さんは京都府出身で、現在は京都市内在住だが、東京での勤務経験もある。京都と東京のどちらも知る人だからこそ作れるマップなのだ。

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