例えば、若者が集う街「渋谷」。京都でこれに当てはまるのが「河原町・烏丸エリア」だ。このエリアには多数商店街が連なり、その1つ「新京極」は約500メートルの間に映画館やゲームセンター、土産物店などがあり、若者や修学旅行生もたくさん訪れる。

 東京の高級住宅街といえば「田園調布」だが、京都でこれにあてはまるのが世界遺産・下鴨神社のある「下鴨」。また都内でも最近、谷根千として人気の「谷中」「根津」は、京都でいうと「西陣」「紫野」らしい。

 そして面白いのが、「京都駅」が東京駅ではなく「品川駅」になっているところ。京都駅には新幹線が止まるものの、周辺は取り立てて栄えておらず、あえて飲みにでかける場所でもない。「新幹線に乗るときしか行かない」という意味で確かにしっくりくる。

●「京都」というブランドをよそ者が邪魔してはならない

 京都に移住というと、町屋などをイメージする人が多いかもしれないが、岸本さんは「それもよく考えてから」と語る。
「確かに町屋は移住希望者の方にとても人気ではあります。ただ、町屋は冬とても寒かったり、ネズミが出たりすることもあります。私たちは最初マンションなどに住むことをおすすめしますね」(岸本さん)

 そして、もう1つ注意すべきなのは京都人のプライドの高さだろう。先ほど、洛中出身者以外は京都出身と認めない風潮があると紹介したが、京都市内では他県出身者はもちろん、京都府出身でも一度府外に出た人は“よそ者扱い”されてしまう。

「“京都”という神様がくれた宝物を守るのが京都の人々のミッション。それを阻害する人たちは、受け入れられないところがあります」(田中さん)

 京都は、創業100年以上の長寿企業輩出率は全国1位(帝国データバンク・長寿企業の実態調査2014年)。また、地域団体商標出願・登録数、国指定重要文化財の建造物数、国指定伝統工芸品数が全国1位(いずれも京都府統計ナビ・京都府のいちばん2016年)でもある。つまり、先人が築いてきた伝統を守ってきたのが京都人で、それを引き継ぐのが最も重要なことなのだ。

 その一方、伝統技術を生かしつつ新しいものを取り入れ、先端技術が作られている不易流行的な側面も。現在、清水焼の焼成技術・高温加熱工程を活かしてセラミックコンデンサーや人工歯が作られたり、友禅染の捺染技術が半導体プリント基板印刷に活用されているのがよい例だ。

 もちろん京都は京都市内だけではない。京都市内に近接する地域や北部エリアに目を向けてみてもいいだろう。ただ、それでも京都市内への移住を考えるなら、“京都”という伝統を守る人々とともに生きる覚悟を持つこと。そして、“よそ者”として京都ブランドを阻害せずにどう新しい価値を提供できるか、よく考えてから移住することが大事ではないだろうか。(ダイヤモンド・オンライン編集部 林恭子)