また、レポートは、保険会社が金融機関代理店に対して、販売サポートとして、販売手数料の上乗せキャンペーンや募集人(販売員)向けのインセンティブ供与を「幅広く実施」していることも問題視している。「こうした販売サポートは、多くの保険会社(商品提供側)と金融機関代理店(商品販売側)の間で実施される中、付与競争の様相を呈しており、最終的に、顧客が支払う保険料を上昇させる要因の一つとなっている」と述べているが、正しい分析だろう。

 顧客の犠牲の下に、こうした競争が行われているのであり、心ある学生が読むと保険会社にも、銀行にも就職したくなくなるような記述(で、かつ現実)だ。

(3) ラップ口座(特にファンドラップ)

 さて、近年、金融庁が投信の回転売買に厳しくなったことに対する、金融業界の次の一手の一つがラップ口座、特に、投資信託を運用対象とするファンドラップだった。ラップ口座は、現在、残高が急激に伸びている。2016年3月末時点で5.8兆円あり、投資信託残高(92兆円)の6%の水準に達しているという。

 金融庁のラップに対する批判は、オーソドックスに「運用コスト」に向けられている。

 レポートによると、ラップの手数料と投資対象商品の信託報酬を合わせた、ファンドラップの顧客が負担する手数料は平均で年間2.2%に達するという。

 これに対して、一般の投信の手数料を販売に3%、信託報酬で1.5%とすると、「4年を超えて投資を継続する場合、ファンドラップの方が一般の投資信託よりも保有コストは高くなる計算となる」(p69)との計算をレポートは示している。

 端的に言って、どちらもダメなのだが、ファンドラップの手数料は何とも高いということだ。

 付け加えるなら、外貨建て資産の売買の際の為替手数料や、債券の売買価格などを使って、実質的な手数料をさらに仕込むことができ、ラップの手数料と信託報酬以上の手数料をむしり取られることが、対面営業型の証券会社ではあり得るようなので、ご注意されたい。

 また、金融庁は、ファンドラップについて、運用対象の投資信託が、系列の投資運用業者によって設定されたものであることを指摘し、加えて、「当該助言会社の大半が系列会社となっている等、選定プロセスの透明化に向けた取り組みはいまだ途上にある」(p63)と述べている。

 投資家は、ファンドラップは、コストが高いし、プロセスが不透明だから近づかない方がいい運用サービスだ、と認識するのが素直で適切だ。

●金融庁が推進する分散・積立・長期投資

 毎月分配型投資信託、外貨建て一時払い保険、ファンドラップのいずれも、「買った(あるいは、契約した)」とか「勧められた」と頻繁に聞く商品・サービスであるが、いずれにも一切近づかない方がいいとはっきり述べておきたい。

 なお、金融庁は、レポートを見る限り、分散投資、積立投資、長期投資を推進しようと考えており、積立投資を前提として非課税期間20年を設ける「積立NISA」を構想中だとも報じられている。

 長期投資でリスクが縮小する、あるいは、積立投資が有利だと認識しているとすれば、金融論的には間違いだが、運用益非課税の制度を使って、国民、特に資産形成世代に対して幾らかまともな投資を普及・啓蒙しようという意図は前向きに評価したい。

 ただ、金融レポートでも挙げられている通り、金融資産の大きな部分を保有しているのは高齢者であり、彼らを適切に保護するための対策には、もう一歩以上の踏み込みが必要だろう。

 金融庁の一層の頑張りに期待したい。