Photo: Junichi Takahashi
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 7月10日、梅雨が明けてしまったかのような炎天下で、「岩沼みんなの家」の竣工式が行われた。30度を超える暑さの中、集まった多くの関係者は汗をかきながらも楽しそうに過ごしていた。

 東日本大震災の被災地に地域のコミュニケーションの場を作ろうと、伊東豊雄、山本理顕、内藤廣、隈研吾、妹島和世の5人の建築家が結成した「帰心の会」が提唱する「みんなの家」プロジェクト。これまでに仙台や東松島、陸前高田などに建てられてきた「みんなの家」も、この宮城県の岩沼で7軒目となる。伊東さんは、このプロジェクトがきっかけとなって、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展の金獅子賞を受賞。その後、建築界のノーベル賞と呼ばれるプリツカー賞も受賞したが、このプロジェクトが寄与した部分も少なくないのではないだろうか。

 僕は1年半前、1軒目となる仙台の「みんなの家」を訪ねて、プロジェクトに共感し、それ以来できるだけ協力しようと考えてきた。今回の「岩沼みんなの家」の施主であるIT企業「インフォコム」は、もともと僕と縁のあった会社だ。何か被災地の支援活動をしたいという話があったので、すぐに伊東さんと相談し、みんなの家の建設を提案、今回のプロジェクトが実現した。

 人と人を繋ぎ、それが形になる。これは僕にとって一番嬉しいことだ。特にこの「岩沼みんなの家」は、被災地の〝次の一歩〟を提案するプロジェクトになっている。これまでの「みんなの家」は被災者が集まり、憩うための場として造られ、実際にその役割を果たしてきた。慣れ親しんだコミュニティーを離れ、狭い仮設住宅で暮らさざるを得なくなった人たちにとっての心の拠り所になっているのを、僕も自分の目で見てきた。

 だが、この「岩沼みんなの家」は、憩いの場としてはもちろん、地元の農業を発展させるため、直売のマーケットやその場で農作物を食べられる場所としても機能するように造られている。従来の「みんなの家」よりも広々とした平屋造り。中に入ってまず目に入るのが立派なオープンキッチンとテーブルで、土間になっている床の上には、昔ながらのかまどがしつらえられている。
「昔ながらのかまどの作り方を教えてもらい、地元の人たちがみんなで作り上げました。鉄釜で地元の米を炊くことができますし、ピザを焼くこともできるんです」(伊東事務所関係者)

 この日は地元の食材を使ったたくさんの料理を作っていたが、おにぎり、ピザ、パンなどどれもおいしかった。ここにカフェができたらかなりの人気店になるのではないだろうか。

 インフォコムが施主ということで、タブレット端末やモニターが常設されているのも新しい特徴だ。生産管理や販売促進、情報発信など地元農業のIT化を進めることができる。僕はこのシステムを他の「みんなの家」にも導入し、「みんなの家ネットワーク」を作ればいいのではないかと思った。将来的には、「みんなの家」を中心とした東北地方のネットワークができれば、もっとさまざまな発展の形が生まれるだろう。

 もちろん一番の目的は地元の人たちのコミュニケーションの場ということだが、ここから新しい何かが始まるような気がする。天然木をふんだんに使った家屋は、あたたかみがあり、明るい。敷地は広く、庭には美しい木や花が植えられ、ちょっとした公園のようになっている。
「みんなの家」プロジェクトはまだまだ進行中で、今年だけでもあと3、4軒建つ予定だという。これからも「みんなの家」は、さまざまな進化を続けるだろう。今回の竣工式に出席して、たくさんの人たちの笑顔に触れ、「このプロジェクトが、今の日本社会に対して本当に必要な地域社会の形を提案しているのではないか」という思いが強くなった。人と人、地域と地域を繋げるこのプロジェクト、これからも伊東さんとともに僕もできるだけのことをやっていきたい。