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第13回 作り手と使い手の出会いの場

文・鈴木正晴

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山形の農家サトウさんの山菜販売会

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タカダさんの手作りたわし体験会

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ハーブティーのブレンドワークショップ

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有文堂アリトウさんの和綴じ体験会

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 日本百貨店の鈴木正晴です。日本百貨店には毎日たくさんのヒトがいらっしゃいます。お買い物に来られるお客さまはもちろんですが、生産者、職人の方々、また自治体や支援団体の方など、作り手にかかわる方々が毎日のようにお店を訪ねてくれます。その中には初めて商品の売り込みにいらっしゃる生産者の方もいるのですが、日本百貨店に特徴的なのは、すでにお取引のあるみなさんが、よくお店にいらしてくださることです。

 彼らは店頭で何をするのか。食品の作り手であれば試食販売。雑貨の作り手であればワークショップや実演販売。そこまで時間が取れない時でも、許される時間の中で積極的にお客さまとお話しされて、楽しそうに帰られます。

 和歌山のたわし職人、タカダさんのワークショップは大人気。毎回たくさんの方が「えー!たわしってこうやって作るんだ!」と驚きの声をあげられます。先日行ったハーブティーのブレンドワークショップでは、同じく和歌山の無農薬茶葉農家、オオイズミさんの茶葉への愛情たっぷりトークで大盛り上がり。和綴じ職人である有文堂のアリトウさんの実演と、職人としての経験の問わず語りは多くのファンを集めます。

 作り手のみなさんには、仕入れの時に必ずお願いすることがあります。東京にいらしたときには、1時間でも30分でもいいので、なるべくお店に顔を出して、お客さまと触れ合ってほしいと。

 お客さまはお金を払う立場。もちろんお褒めの言葉もたくさんいただきますが、消費税もアップしてお財布の紐が非常に固くなり、厳しい意見も頂戴します。でかい、小さい、甘い、辛い、まずい、高い……。率直にお話しくださるたくさんのお客さま、本当にありがたい存在です。厳しいお話をいただいた時こそ作り手にとっては大チャンス。その話をしっかりと胸に刻んで、次のモノヅクリに励みます。特に食品は、お客さまの声で改善された商品が非常に多いのです。

 お店のコンセプトを、お客さま=使い手も、そして作り手も理解してくれている。だから作り手と使い手の会話が成り立ち、日本百貨店は出会いの場になっているのだと自負しています。

 私たちが一番大切にしているもの。前回までのコラムを読んでいただいた方にはご理解いただけると思いますが、それはモノでもなくコトでもなく、ヒトです。すべてはヒトありき。ヒトとのお付き合いがあるからこそ、モノとその背景が理解できて、ほれ込むことができる。そのヒトのために何かをしようという思いから、新しいコトが生まれる。

 お店をオープンして4年半。準備期間も入れると、もう10年近くも日本製の“モノ”にかかわる仕事をしてきましたが、とにかくたくさんの人との出会いに助けられ、勇気づけられ、今日まで生きてきました。これからもきっと、たくさんの人たちに助けてもらい、逆に助けたりもしながら、日本百貨店は成り立っていくのだと思います。


(更新 2015/6/24 )


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プロフィール

鈴木正晴(すずき・まさはる)

 株式会社日本百貨店・代表取締役社長、ディレクター兼バイヤー。1975年神奈川県生まれ。1997年東京大学教育学部卒業後、伊藤忠商事株式会社に入社。アパレル関連の部門で、海外とのビジネスを多く経験する中で、国内の“モノ づくり”文化に根差したすぐれものをより広いマーケットに広める一助となりたいと考え、2006年3月伊藤忠商事を退社。2006年4月に株式会社コンタン(現・株式会社日本百貨店)を立ち上げる。2010年12月には東京・御徒町に、日本の優れものを集める小売店“日本百貨店”を オープン。食・雑貨・衣料雑貨など、全国から様々なこだわりの商材を集め、作り手と使い手の出 会いの場を提供している。著書に「日本百貨店」(飛鳥新社 2012/12)

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