16歳の息子は、おつかいができない。人の話を最後まで聞いていないのだ。
 たとえば私が、
「ハンバーグ弁当買って来て。もし売り切れてたら唐揚げ弁当ね」
 と言うと、大抵唐揚げ弁当を買ってきてしまうのだ。

 そんな息子が、このたび修学旅行から帰還した。彼が出発する前にその土地の名産品である和菓子を頼んではいたし、「おばあちゃんやパパ(関西在住)にもおみやげを買ってくるのよ」と付け加えてもいた。
「わかった~」
 と答えつつも、間近に迫る楽しい予定のほうに気が行っているらしく、息子は上の空だったので、きっと買ってきてはくれないだろう、と、最初からあきらめていた。

 小学校の修学旅行の時、息子が買ってきたのは「自分が遊ぶおもちゃ」だった。おみやげタイムは自分が欲しいものを買う時間だとでも思っていたのだろうか。

「……ママたちにおみやげは?」
「あ、そうか」

 息子は少しだけ学習したらしく、中学の修学旅行の時は、さすがにおみやげを買ってきてくれた。けれど、お菓子1箱のみだった。

「え? ママにだけ? おばあちゃんやパパの分は?」
「え? これをみんなで分ければいいんじゃないの?」
「それじゃほんのちょっぴりじゃないの。普通はひとり1箱買ってくるものよ」
「あ、そうか」

 今度はさらに進歩しているといいけれど、と彼が差し出した箱を見て驚いた。なんと、頼んでいた1箱1000円の和菓子がそこにあったのだ。

「ありがとう! 買ってこれたんだね! よかった!!」
 幼児がはじめてのおつかいに成功したときのようにはしゃぐ私は、その箱の下も何かあるのに気づいた。
「おばあちゃんとパパにも買ってきたよ」
 得意げに説明する息子を前に私はがっくりとした。

「あのね、これは生菓子だから、遠くに住んでいる人に送ることはできないんだよ」
「あ、そっか」

 息子はこうしてひとつひとつ学習していくらしい。彼が立派な社会人になるまで大分時間がかかりそうだ。でも親なんだから付き合うしかないんだろうなと、冷凍保存した和菓子を今日もチンして口にしている私なのだった。