第1307回 “待っていた”リン 〈週刊朝日〉|AERA dot. (アエラドット)

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第1307回 “待っていた”リン

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 9年前のことです。肌寒い梅雨の時季、以前散歩をしていた通りを久しぶりに歩いてみました。

 するとアパートが並ぶ一角に木のリンゴ箱が置いてあり、その中に子猫が5匹入っています。誰かが飼っているんだな、と私は胸の中でつぶやきました。

 その日から、私は散歩に出る度にその猫たちを見て幸せな気分で過ごしていました。

 子猫たちは仲良くじゃれ合って遊び、親猫は近くで見守る……。夏が来る頃には子猫たちもだいぶ大きくなって、可愛くなってきました。

 私は散歩のときにはキャットフードを持って出て、子猫たちに食べさせていました。その後のことなど考えもせずに日々を送っていたのです。

 やがて枯れ葉の舞う季節になり、ある日、いつものように散歩に行くと、子猫たちの姿が見えないのです。親猫の姿もありません。あれ~、リンゴ箱もなくなっています。どうしたのかなと思い、見回すと、アパートの階段の下あたり、枯れ葉がカサカサしているその中に、1匹だけ子猫がうずくまっていました。午後の日差しが暖かく、気持よさそうにゴロゴロして私の顔を見ていました。

 1匹だけ残されて可哀想だと思い、「ぐるっと歩いてくるけど、それまで待っていたら連れて帰ってあげる」と言って、30分ほどして戻ると、意外なことに子猫は同じところにそのままいました。こうして家に連れて帰ったのが、今わが家にいるリン(雌、写真)です。

 当時、飼っていた猫を亡くし寂しい日々を送っていた私は、今とても幸せです。元気ももらいました。授かったのだと思っています。

 あれから何度あの散歩道を通っても、親猫もきょうだい猫たちも姿を見せることはありません。

(長瀬広子さん 青森県/63歳/無職)


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(更新 2019/1/10 )


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