お空に昇った「とら」(写真、雄)。その後どうしていますか。お別れしてから1年ですが、おっちゃんは「とら」のことが頭を離れません。

「とら」を初めて見たのは、近所のさんが何匹かの子猫を連れてわが家の前を通った折のこと。子猫の一匹を見て、あの子可愛いな欲しいなと、それまで猫を飼ったことがないおっちゃんが心底思ったのでした。

 わが家に来た日に、おっちゃんの手を思い切り噛んだ「とら」。いきなり知らない家に連れて来られ、怒ったのか、一日中押し入れに入った「とら」。気性が激しく、敵対する猫には徹底的に攻撃する「とら」。そんな「とら」をしかしいとおしく思うのでした。

「とら」と独り者のおっちゃんが暮らす日々は、葛藤と矛盾だらけの職場とは違い、幸せに満ちたものでした。業務を終え、帰宅するのが待ち遠しいほどだったのは知っていたのかな。

 帰宅すると、玄関で必ずお出迎えしてくれ、思わず笑みが漏れたものでした。

 何度かあったね。2階の窓からいつ帰るか、と外を眺めていた「とら」と窓を見上げたおっちゃんの目が合ったことが。

 人と違い、猫が老いるのは早いよね。知らないうちに「とら」は年老い、腎臓が悪くなったのでした。でも、19歳の長寿表彰まで受けたのだから20歳も夢ではない、とおっちゃんは思っていました。1年以上、毎日自宅で輸液を入れながら一生懸命、頑張ったよね。

 お別れのその日までお薬とミルクを飲んでくれて、19年と5カ月を懸命に生きた「とら」。お別れの時には、抱きしめたおっちゃんの目を見詰めたまま空に昇った「とら」。

 しばらくの間、おっちゃんはどうしているのかな、とお空から見ていてね。大好きな、大好きな「とら」。

尾信行さん 大阪府/69歳/無職)

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