名前は武智夫(写真)。

 スズメやヒヨドリを狙う姿が勇ましく、賢そうなのでつけた名前だ。狩りの時は腹を地面すれすれに近づけ、注意深く前進する。まるでライオンやヒョウが獲物を狙う時のようだ。木にいる鳥を捕ろうとする時はリスみたいにすばしこい。

 去年、庭でスズメにパンをやっていると、椿の葉陰から躍り出たのが武智夫だった。そして鳥のようにパンを食べた。

 以後、毎日椿の葉陰でパンを待ち、鳥を狙うようになった。スズメを守るため、キャットフードを買って別の場所でやることにした。

 キャットフードに近づく姿には毎回笑ってしまう。例の、腹を地面すれすれにして前進する狩りの姿勢だ。時々止まっては私の動きを観察。私が少しでも近づけば椿の下へ戻る。

 私が部屋に入り、サッシを閉めると安心して食べる。一度も体に手を触れさせない野生っぽいなのだ。

 武智夫は朝8時から夕刻まで椿の木の下で過ごす。食後は日なたぼっこと昼寝。鳥の声がすると耳の中の毛がピッピッと動き、耳が鳴き声のする方角に向く。

 武智夫がうちに滞在するのは昼間だけ。土曜、日曜、雨と雪の日には来ない。最初はこれに気づかず、土日は連続して姿が見えないので交通事故で死んだのかと思い、泣きそうになった。

 月曜、毛並みがフカフカ、白い部分が真っ白になって姿を現すのを見て、どこかの飼い猫なのだとわかった。夜は暖かい寝床で眠り、土日は飼い主に可愛がられているのだろう。きっと、他人には懐かないようしつけられているんだ。

 私は、武智夫が通ってきてくれるのがうれしくて、出勤簿をつけている。ただ、武智夫と呼んではいるが、実は年齢はもとより、フサフサの尻尾に隠れ、性別も確認できないでいる。

(渡辺雅子さん 神奈川県/71歳/無職)

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