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わが家のレオという名の茶トラの雄猫(写真)は、律義な性格だ。特別に教え込んだわけでもないのに、わが家のささやかな決まり事をしっかりと守る。
レオは下の階で女房と一緒に寝ているのだが、どういうわけか、決まって朝の7時ごろになると2階で寝ている私を起こしに来る。7時を10分と違えることはない。猫が時計で時間を確認するはずはないから、女房がいつも同じ時刻に起きるのと関係があるのかもしれない。
起きて起きて、と促すように、レオは鳴きながら小走りに私の部屋に入って来る。すぐにベッドに飛び乗ると、遠慮なくズカズカと布団を踏んで私の耳元に来る。そしてやおら顔を近づけると、ゴロゴロいいながら私の匂いをクンクンかぐ。
レオの鼻先は湿っているので、触れられると冬などはびっくりするほど冷たい。
それでも意地悪く寝たふりをしていると、ペロリとなめられることもある。なんとか私を起こさなくてはという責任感からか、私の首筋を軽く引っかくことさえあるから油断がならない。
レオはもう16歳の老猫だから、元気にはしていても階段の上り下りは大変なようだ。昼間、上る途中で階段の上のほうを恨めしげに仰ぎ見ながらため息をついているのを見て、ハッとしたことがあった。
頭のほうから下りていく猫にとって、階段を下りるのは上るのよりもさらに大変なようだ。私を起こすという朝のひと仕事を終え、休み休み1段ずつ慎重に下りていくレオの後ろ姿を見ていると、ゆっくりでいいんだよ、気をつけてねと、声をかけたくなる。
あんなに小さな体なのに飼い主との関係の機微を知りつくしているレオがいとおしく、私のほうが先に死ぬことはできない、と思わない日はない。
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