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第27回 自分にベクトルを向ける文・大谷由里子 |

新潟で不登校の子どもたちのためにフリースクール「寺子屋ありがとう」を経営している岸本達也さんという男性がいる。
彼は、かつて船乗りだった。
ところが、彼は病気になって、体調を壊した。休職と復職を繰り返す日々。
めまいがするために船にも乗れなくなった。
休職しているときに、友人から相談を受けた。
「子どもが不登校になって高校を辞めたんだ」
「僕、時間あるし、勉強みてあげようか?」
ということで、友人の子どもの勉強の面倒をみた。
そして、その友人の子どもは大検に受かった。
両親にも、その子にも感謝された。
人に感謝されることが嬉しくて、
「不登校の子供たちのためのフリースクールをやろう!」
と岸本さんはフリースクールを立ち上げた。
ところが、思ったようにうまくいかない。
言うことをきいてくれない子どもたち。
「岸本さんに預けたのに効果ない」と、文句を言う親たち。
「そんなに簡単にできるはずがない」と、冷たい先生たち。
そんな現実に、岸本さんは「教育委員会が悪い」「モンスターペアレントが悪い」と、いろんな人を責めた。
それだけでなく、生徒たちとも言い合いをした。取っ組み合いになったこともある。
そんなある日、取材を受けた。
不登校の子どもたちのためにスクールを立ち上げた際の思いを熱く語った。
けれども、それを聞いた記者が言った。
「本当は、岸本さん、自分のためにスクールを開いたんじゃないですか?」
(更新 2015/8/18 )

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プロフィール
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大谷由里子(おおたに・ゆりこ) 1963年奈良県生まれ。京都ノートルダム女子大学を卒業後、吉本興業に入社。故・横山やすし氏のマネージャーを務め、宮川大助・花子、若井こずえ・みどりなどを売りだし注目を集める。2003年、研修会社の志縁塾を設立。「笑い」を取り入れた「人材育成研修」は、NHKスペシャルなど多くのメディアで話題となっている。 現在は、年間300を超える講演・研修をプロデュース中。主な著書に『仕事で大事なルールは吉本興業で学んだ』(こう書房)、『はじめて講師を頼まれたら読む本』(中経出版)など多数。 |