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五右衛門ロックシリーズ、最後の日に思うこと

文・中島かずき

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『ZIPANG PUNK ー五右衛門ロックⅢー』全69公演が終了しました。 
 いつも初日にいのうえが言うことですが、けがや病気などで一人の脱落者も出すことなく、千秋楽まで同じメンバーでやり続けることができました。
 劇場に足を運んでいただいたみなさん、応援していただいたみなさん、ありがとうございました。

 千秋楽の日、楽屋の廊下を通っていると、浦井健治くんが「あ、かずきさん。これ見て」と何やら持ってきます。
「うわあ、これはまた懐かしいものを」思わず声を上げました。
『おしゃれCAT』と『宇宙防衛軍ヒデマロ2』。今から25年ほど前、まだ、大阪だけでやっていた頃の新感線のふるーいチラシでした。
「どうしたの、こんな珍しいもの」
「ファンの方からもらったんです」
 浦井くんのファンの中に、古くから新感線を知っていた方がいたのでしょうか。
 ちょうど三浦春馬くんも通りがかったので、「新感線の昔のチラシなんだよ」と浦井くんが自慢げに見せました。
「この『おしゃれCAT』は、新感線で一番お客さんが入らなかった作品でね、全公演で300人くらいしかこなかったんだよ」というと、二人はびっくりしていました。
 この公演をやった当時は、一番お客さんが入らなかった時期でした。
 公演数を増やせば動員がのびるかと、月に一本新作を上演するも、逆に粗製濫造(そせいらんぞう)となったのか、客足がじりじり落ちていくという苦難の時期だったのですね。波はありながらもそんなことを二年ほど繰り返した末、『阿修羅城の瞳』の初演で初めて新感線オリジナル作品としては動員が千人を突破して(これは当時の新感線としては画期的なことでした)、翌年、東京公演を行うことで、大阪でのお客さんも一気に増えることになるのです。
「300人って、今だったら当日券に並んでくれてる人数じゃないですか」と浦井くん。それはちょっと大げさかもしれませんが、確かに今回の公演が13万人の動員数だったことを思えば、驚きの少なさでしょう。
 そうか。
 よく考えたら、『おしゃれCAT』も『宇宙防衛軍ヒデマロ2』も、春馬くんが生まれる前の作品だ。シアタートップスや青山円形劇場で公演していた新感線ですら知らないのですよね。
 自分たちがついこの間だと思っていたことが、若いキャストだともう遠い遠いことのような気分になるのかもしれない。
 浦井くんや春馬くんと話をしていて、そんなことを思ったりもしました。

 逆に、麿赤兒さんや村井國夫さんから昔の話を伺うと無類に面白かったりするので、こうやって世代がつながっていくのかなと思ったりもします。
 改めて、すてきなキャストに恵まれた、いいお祭りだったなと思います。

 大千穐楽のカーテンコール、恒例の煎餅まきが、五右衛門ロックシリーズ、パート1からパート3までの主題歌メドレーに乗せて行われました。
 その際、舞台上のディスプレイに過去作の映像が流れていました。
 今回のキャストが煎餅まきをしている横で、北大路欣也さん、江口洋介さん、松雪泰子さん、森山未來くん、天海祐希さん、藤木孝さん、神田沙也加さんなどが次々に画面に現れるのを見ると、改めて、なんとも豪華なゲストに恵まれたシリーズだったなあと感慨深かったですね。一公演300人しか入らなかった時代を考えると、嘘のようです。
 そして、この豪華メンバーを迎えて、堂々と座長を務めてくれた古田新太という役者の存在感も再認識させられました。
 それにしても、この年齢になった古田に、石川五右衛門というキャラクターは本当によくはまったなあと思います。
 一応、これで最後のつもりなのですが、ひょっとしたらこの男はいつの日か「また、一暴れしたいんだけど」とフラリと舞台に帰ってくるかもしれないな。
 最後の挨拶をしている古田五右衛門を見ていると、そんな気さえする大千穐楽でした。
 あ、あてにはしないでくださいね。ほんとに個人的な思いですので。


(更新 2013/3/ 7 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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