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『戯伝写楽 ーその男、十郎兵衛ー』開幕しました!

文・中島かずき

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『戯伝写楽 ーその男、十郎兵衛ー』、無事に初日の幕が開きました。
 去年の震災で中止せざるを得なくなってから11ヶ月。
 色々ありましたが、再びこの芝居が世に出ることになって、ホッとしています。
 
 今回、改めて感じるのは朴?美さんのエネルギーです。
 朴さんが、女優・声優として活躍されているのはご存じの方も多いでしょう。
 ですが、今回はプロデューサーに徹し、芝居を作ることに専念されています。
 一年前の時も同じ立場だったのですが、その時と今回では取り組み方が違う。前回は最初ということもあり、遠慮している部分もあったのでしょう。
 自分自身の関わり方も含めて、震災で中止になったこの作品をもう一度立ち上げる際には、随分悩んでいる時期がありました。
 どうすべきか相談を受けた時に、悩んでいる姿があまりに辛そうだったので、「少しでもいやだと思う気持ちがあるなら、やめるという選択もあるよ。自分自身が中途半端な気持ちで参加してあとで後悔するくらいなら、今ここでやめることは逃げることとは違うと思うよ」とアドバイスしたこともあります。
 ですが、もう一度やると決めてからの彼女の動きはすごかった。キャスティングほか、いろいろと大変な調整はあったと思うのですが、自分が作りたい物をぶれずに作りたい。その思いをキャスト、スタッフ、もちろん作家の僕にも、まっすぐにぶつけてきます。
 人間、腹を据えるというのはこういうことをいうのだなと思いました。

 その熱は、主役の宮野真守くんを初めとするキャスト陣にも確実に伝わっているはずです。
 今回は、平野綾さん、関智一さん、そして大ベテランの柴田秀勝さんと、声優として活躍されている方も多く参加しています。
 これも朴さんの考えです。
 前回は、宮野くんを主演とすることで声優芝居といわれたくないという思いもあったようですが、今回はそういうある種肩肘の張った考えはやめて、声優だろうと何だろうと気にしないで、自分が信頼出来る役者さんに参加してもらおうと思ったのではないか。僕にはそんな風に感じられました。
 芝居の中味にもガンガン突っ込んでいき、役者の芝居にも注文を出す。
 とにかく自分が面白いと思えるものを作るんだ。シンプルですが力強い気持ちが人を動かす。それが彼女の魅力なんでしょうね。 
 前回からの参加者も今回からの方も含めて、朴さんの熱に巻き込まれて熱い芝居をつくろうという気持ちになっていると思います。

 初日の本番を観て、いろいろあったけど、もう一度この芝居を立ち上げてよかったなと思いました。
 前回よりも役者も演出もよくなっています。
 朴さんも、今回やっぱりやってよかったという表情だったので、安心しました。
 演出の中屋敷法仁くんも、やっぱり前回、非常にイレギュラーな形で公演を中止しなければならなかったことが心のどこかでひっかかっていたようです。
 その宿題にけりがつけられる。
 それは中屋敷くんだけでなく、前回の参加者全員に通じる気持ちのようにも感じました。
 
 公演期間は五日間と、最近の自分の芝居としては短い期間で終わってしまいますが、この五日間が中身の濃いものになるだろうと期待しています。


(更新 2012/2/ 2 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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