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大河からはじまるプログレ名曲めぐり

文・中島かずき

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 今年の大河ドラマ『平清盛』が始まりました。
 前作の『江』とは打って変わって、骨太で男臭い大河ドラマになりそうで楽しみにしています。
 あの映像を見て「画面が汚い」と兵庫県知事がクレームを述べたという報道がありましたが、あれだけの絵を作るのにどれだけ手間と知恵と費用がかかるかなど考えもしないのでしょうね。僕は、あの画面を最近のテレビドラマでは破格の"豊かな意志のある絵"だと思いましたが。
 ひょっとしたら、彼はドラマを県の宣伝ツールとしてしか捉えていないのかもしれません。だとしたら寂しいですね。
 まあ、確かに世の中には『物語』を必要としない人間がいるものです。現実世界での利益にしか興味がない人。兵庫県知事がそうかどうかはわかりませんが、政治家にはそういうタイプが多いかなという印象もあります。

 それはさておき、『平清盛』を見ていて驚いたのは、エマーソン・レイク&パーマーの『タルカス』が使われていることです。
 最初にオープニングでこの曲名を見たときは目を疑いました。
 プログレッシブ・ロックの名曲です。
 もう40年近く前になるでしょうか。中高生の頃よく聞いていました。
 あの当時はプログレというジャンルの創生期で、エマーソン・レイク&パーマーの他、ピンク・フロイドとかキング・クリムゾンとか周りでも流行ってましたね。
 僕はピンク・フロイドが好きだったな。『原子心母』『狂気』もいいですが、特に『炎』をヘビロテしてました。
 そんなことはすっかり忘れていたのに、この間、娘が「プログレって聞いてた?」と尋ねてきたのです。
 普段洋楽とはほど遠いところにいる娘が、いきなりそんな質問をするので驚いたのですが、なんでも大学のレポートで、プログレのアルバムを選んでそのライナーノーツを書くという課題が出たそうで。
 最近の大学は面白いですね。
 それで本当に久しぶりにプログレ話をしたところだったので、年始早々テレビから『タルカス』が聞こえてきたのにも妙な偶然の一致に思えました。

 その影響でしょうか。四、五日前に、家内にユーライア・ヒープの曲の入ったカセットテープを捨てろと言われる夢を見ました。
 懐かしいですね。ユーライア・ヒープ。ほんとにすっかり忘れていました。『対自核』くらいは知っているけど、アルバム一枚聞いたことはない。若いときでも名前だけは知っているレベルのバンドです。この40年くらい思い出しもしなかった。
 なぜそんなバンドの夢を突然見るのか。自分の脳が不思議です。
 ちょっと気になってユーライア・ヒープを調べていると、ザ・ピーナッツが『対自核』をコンサートで歌っていることがわかりました。
 また懐かしい名前が出てきました。ザ・ピーナッツ。昭和40年代に絶大な人気を誇った双子の歌姫。『モスラ』のインファント島の小美人とか『シャボン玉ホリデー』のレギュラーとかいうと、少し若い世代にもわかってくれる人がいるでしょうか。
 このピーナッツ版『対自核』を聞いてみると、これが実に素晴らしい。
 しかし、それよりも素晴らしかったのが、彼女たちが歌う『エピタフ』でした。
 これもプログレの代表的バンド、キング・クリムゾンの、これまた代表的名曲です。
 これが実にかっこいい。
 昭和40年代の歌謡曲と言えば、一般的には古くさいものというイメージでしょう。
 ただ、ザ・ピーナッツに関しては、『恋のフーガ』とか今聞いてもスピード感があって、いい曲だなと思うものもあるのですが、それでもこちらのイメージを遙かに上回る完成度でした。
 劇団☆新感線で音楽を担当している岡崎司さんも、このピーナッツ版『対自核』と『エピタフ』を聞いて舌を巻いていました。
 
 このコンサートライブ、CDになって今でも売っているので、思わず買ってしまいました。
 大河ドラマの『タルカス』に始まりザ・ピーナッツの『エピタフ』に終わる、変則的なプログレづいた日々の話でした。


(更新 2012/1/26 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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