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YouTubeに流れるUFO映像と、「わかりにくい嘘」

文・中島かずき

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 子供の頃、少年マガジンなどの漫画雑誌などでたまに「世界の謎と怪奇特集」といった感じで、世界各地で撮られたといわれる空飛ぶ円盤や、雪男やネッシーなどの写真が載っていました。
 面白かったですね。子供心に眉唾だなあと思いながらも、心のどこかで、「宇宙人や未知の怪物がいてくれると楽しいな」と思っていました。
 特に空飛ぶ円盤の写真が好きでしたね。
 中には明らかに「これは雲だろう」「これは窓ガラスに蛍光灯が写り込んでるんだろう」「これは灰皿二つ重ねただけじゃないか」とかツッコミながらも、それでもスペインで撮られたという、漢字の「王」の文字を横にしたような模様の入った円盤が浮かんでいる写真なんかを見ると、心がザワザワしてたまりませんでした。
 空中に本来あり得ない物が浮かんでいるというのに、弱いのかもしれません。『第9地区』なんか、冒頭の古ぼけた巨大UFOが町の上空に鬱陶しそうに浮かんでいるシーンで心が掴まれましたものね。
 
 空飛ぶ円盤がUFOと、未知の怪物がUMAと呼ばれるようになった頃から、自然と、「そういうものはないから」とスタンスを置くようになりました。
 まあ、それが成長という奴なのでしょうね。

 最近、YouTubeにUFO目撃譚の動画が世界中からたくさんアップされています。
 もちろん、フェイクとして作っているのですが、最近のCG技術のアップのおかげで、アマチュアでもそれらしい映像が作れるのですね。
 手持ちカメラでドキュメンタリー風に撮影したりしていると、それが見知らぬ外国の風景であることも相まって、一瞬本当の出来事かと思うくらいリアリティがあったりする。 それが「嘘だ」と思えるのは、先に映画などのはっきりした嘘の世界で、そのくらいの精度を持った映像を観ているからです。
 最近のハリウッド映画などを観ていると、お金と手間さえかければ、もう何でもCGで出来るんじゃないかと思えるくらいです。
 昔は空飛ぶ円盤のいかさま写真を世界中に広めようと思ったら、雑誌や新聞、テレビなどのマスメディアに載せなければならなかった。
 でも今は、ネットにあげればあっという間に世界に広がる。
 怖い時代になったものです。

 そんなことを思いながら、UFO飛来のフェイク映像を眺めていた時にふと思ったのは、今騒ぎになっている、尖閣諸島での中国漁船衝突の映像流出事件です。
 もちろん、あれがフェイクだというつもりはない。
 それはここまでの政府の対応を見ていれば、誰でもそう思うでしょう。
 でも、技術的なことだけを言えば、あの映像だってあとで作れないわけじゃない。
 ひょっとしたら、そういうことを言い出す人々だっているかもしれない。
 映像のほうが写真よりもリアリティがあるから、より真実を見ているように思いがちだけど、目の前で起こったことを見ているわけじゃないということは、改めて肝に銘じなければならないなと思います。

 ただ、間違いないのは、以前はマスメディアが情報流通の軸だったが、今では個人がダイレクトに世界に対し発信出来るようになったということです。
 でも、逆にそれは今まで以上に個人の意識を問われると思うのです。
 中国の人々の思い込みも、日本の人々の思い込みも、同じようにダイレクトにネットに上がる。
 空飛ぶ円盤のフェイク映像なら、まだ嘘だとわかる。
 でも、もっとわかりにくい嘘が上がっている時に、それを嘘だと見抜けるか。
 今まで以上に、難しい時代になっているのだと感じています。
 


(更新 2010/11/11 )


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中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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