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カーテンコールの拍手に感じる、劇作家の幸せ

文・中島かずき

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『薔薇とサムライ』、いよいよ東京公演も大詰めです。今週の日曜日、18日が東京公演の千秋楽になります。
 おかげさまで非常に好評です。当日券を求めて連日、多くのお客さんが並んでいるとのこと。最近は席がなく、帰っていただく方も多いと聞いて申し訳ない思いです。

 天海祐希さんのパワーは期待以上でした。自分が見たい天海さんを全部ぶち込んだのですが、それを上回るかっこよさにほれぼれします。
 それを支える古田を初め、他のゲストのみなさんもいいバランスでそれぞれの魅力を発揮している。
 こんな時代だから、せめて芝居くらいはスカッとするものを、見終わったあとに「ああ、面白かった。明日も頑張ろう」と思えるような後味の作品が作りたいというのが今回の狙いだったのですが、どうやらそれはうまくいったようです。

 元気になるのはお客さんばかりではありません。
 最近、会社の仕事が忙しくて、あっという間に夜になり、終演間際に劇場に駆けつけることも多いのですが、カーテンコールの拍手を聞くと、僕の疲れた気持ちも一気に晴れるのです。
 本当に楽しいとき、面白かったと思うときのお客さんの拍手は力強さが違います。劇場に響く圧力が違うように僕には思えるのです。
「面白かったよ」という思いが劇場に満ちる、そういう拍手をいただいた時は、多分舞台の上の役者と観客との間にとても幸福な関係ができている。その瞬間を感じたとき、役者も僕達スタッフも舞台をやっていて本当によかったと思えます。
 お客さんから僕も元気をもらっているのです。

 一番最初にそれを感じたのは『仮名絵本西遊記』の初演、東京公演の初日でした。
 東京に進出して三本目のいのうえ歌舞伎の新作です。
 芝居が終わった瞬間、満員のシアタートップスを割れんばかりの拍手が包みました。
 その拍手が「おもしろかった!」という声に聞こえて、それが嬉しくて、劇場の隅で様子を伺っていた僕の胸にも熱い物がこみ上げたのです。
 あんな感覚は、その時が初めてでした。
 一昨年の夏の『五右衛門ロック』のプレビュー。カーテンコールで総立ちになるお客さんを見ながら、久しぶりにその時の感覚を思い出しました。

 芝居の脚本、特に新感線の芝居のようにエンターテイメント作品の脚本を書く醍醐味は、ここにあるなと思います。
 自分の作品の評価をしてくれる人達が目の前にいる。
 たとえ小説で100万部のベストセラーを出したとしても、目の前で自分の作品を読み、目の前で声を上げて笑い、時に目を潤ませ、読み終わったら拍手をする。そんな光景に出くわすことはまずないでしょう。
 それが芝居だと可能になる。
 もちろん、脚本だけの力ではありません。役者、演出、その他のスタッフ。そこに関わる全ての人間の力で、舞台という作品は出来上がる。
 それでも、その作品の一翼を担っているのは間違いありません。
 基本的に物書きは孤独な仕事です。でも、こういうハレの場が用意されている劇作家は、物書きの中でも幸福な部類ではないかと思うのです。
 まあ、評判が悪いときもダイレクトに届くのが怖いところではあるんですがね。


(更新 2010/4/15 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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