『劇場版天元突破グレンラガン螺巖篇』のDVD秘話 |AERA dot. (アエラドット)

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『劇場版天元突破グレンラガン螺巖篇』のDVD秘話

文・中島かずき

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『劇場版天元突破グレンラガン螺巖篇』のDVD発売が決まりました。
 発売日は2010年1月27日。
 まだ少し時間はありますが、Amazonなどでも予約は始まっています。

 ただ、数年前に比べてもDVDの売り上げは落ちているようですね。
 残念ながら、映像その物は観ようと思えばネットで観られる時代。違法にアップロードされた映像作品をただで観て満足する人も多い。でも、作っている方も商売です。仕事として成り立たなければ、やがて作品その物が作られなくなる。無料で観られるならそれがいいやと思っている人も、自分の好きなジャンルの存続のためには投資も必要だということを頭の片隅に置いて欲しいものです。実際、違法アップロードサイトの隆盛で北米のDVD市場は壊滅的になったと言われています。その結果、海外販売をあてにできないために企画が頓挫(とんざ)した作品もあるとか。
 まあ、DVDが売れなくなった原因は、ブルーレイへの移行時期とか、作品が出すぎて飽和状態になっているとか、さすがにオタクにも不況の影響が出て財布の紐が固くなっているとか、違法アップロードの他にもいろいろと考えられるのでしょうが。

 その厳しい状況の中、おかげさまで『グレンラガン』シリーズはそれなりに好調な売れ行きを示しています。
 パッケージの購買意欲を高めるために、今回も限定生産版にはかなりのボリュームの特典が付いています。
 まあ、DVD担当であるアニプレックスのTプロデューサーは、もともと特典好きのようで、同じく担当の『銀魂』の特典でもかなり無茶をしたものもあると聞いています。 劇場版のDVDを企画している時、そのTさんに是非にと頼まれたのが、ドラマCDのシナリオ書き下ろしです。しかも「できれば前後編にしてほしい」というリクエストでした。
 劇場版が『紅蓮篇』と『螺巖篇』の前後編になっているのですが、ドラマCDも前後編にして、より二本で1セット感を出そうというのです。

『螺巖篇』には、相当馬鹿馬鹿しい『男どアホウ!グレンラガン』というスピンオフのドラマCDをつけました。
『グレンラガン』のメインキャラクター達を使って別設定の物語に仕立て上げる。いわば公式二次創作的作品です。
 その続きになる今回は、『男組だよ!グレンラガン』というタイトルにしています。 実は、テレビシリーズのDVDにも一度ドラマCDをつけたのですが、それが『男一匹グレンラガン』。
 僕が子供の時に読んでいたマンガ作品、『男一匹ガキ大将』『男どアホウ!甲子園』「男組」と、タイトルに男がつくマンガから若干のモチーフをいただいているのですね。
「ドラマCDは"男"シリーズ」なんだよと言うと、ガイナックスの真鍋さんは「わかった。三作目は『男坂』でしょう」と目を輝かせたのですが、車田正美先生入魂の打ち切り作は、僕の思い入れとはちょっと時代がずれるのですよね。僕の世代だとやっぱり先に挙げた三作が、"男"と名がつくマンガの代表作になるのですね。いや、どうでもいいこだわりといえばどうでもいいのですが。

 さて、その『男組だよ!グレンラガン』、10月の終わりに収録だと聞いていたので、10月の頭から書き始めました。しかしこれが書いても書いても終わらない。
 実は今回、アンチスパイラル役の上川隆也さんも参加してくれたのですね。以前に本人からもドラマCD出演の希望もありましたし、グレンラガンチームでアフレコするのも多分これが最後になるので出てもらえるものなら出てもらいたいと、ダメ元で調整した結果、『蛮幽鬼』の東京公演と大阪公演の間に時間が取れた。
 だったらついでだ、できるだけキャラを出そうと、大半のレギュラー陣を揃えることが出来ました。
 これは嬉しい。嬉しいがしかし、キャラが増える分だけ話は長くなる。
 途中から「いかん、この話、CD一枚におさまるのかな」と焦ってきました。
  真鍋さんにやばそうだよと電話すると「収録時間が足りないんだったら業界初のドラマDVDですよ。音声しか入ってないのにDVD。アニプレックスさんなら、Tさんならやってくれますよ」と調子のいいことを言う。さすがは世界のマナベ。自分の仕事にはシビアだが他人の仕事となると、途端にこれだ。
 結局、シナリオは400字詰め89枚になってしまいました。
 芝居だと400字詰め1枚で約1分。それでいけば89分。とてもCD1枚にはおさまらない。というか、アニメなら長編映画並みの長さですよ。
 でも、〆切もとうにすぎてるし、今更短くしろといってもちょっと無理。
「ええい、あとは頼んだぞ、Tさん」とばかり、原稿添付してメールでさっさと送ってしまいました。
 そのあとTさんから連絡があり、録音スタッフと確認したところなんとか70分程度でいけるのではないかとのこと。CD1枚におさまりそうで、一安心でした。

 収録そのものはとても楽しかったです。
 随分間があいたので、声優の皆さんもキャラを思い出すのに時間がかかるかなと思ったのですが、全くの杞憂(きゆう)でした。収録開始からみなさん飛ばす飛ばす。さすがはチームワークのよさが売りだったグレンラガンのキャスト達。上川さんも池田成志さんも、もちろん声優さん達もノリノリで、相当バカバカしい話を相当ハイテンションで演じてくれました。仕上がりが楽しみです。
 ただ、不安なのは、やっぱり時間が長くなってしまい、結局CD1枚におさまるかどうかは、ダビングしてみないとわからなくなってしまったこと。

 さて、特典は無事ドラマCDになるのか、それとも業界初のドラマDVDになるか。発売日をお楽しみにして下さい。
 いや、なっちゃったらなっちゃったで各所に迷惑をかけることにはなるので、洒落にならんのですがね。


(更新 2009/11/ 6 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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