3つの顔で関わった3本の映画 |AERA dot. (アエラドット)

AERA dot.

3つの顔で関わった3本の映画

文・中島かずき

プロフィール  バックナンバー

このエントリーをはてなブックマークに追加

今年のゴールデンウィークは、個人的にちょっと変わった状況になっています。

自分が関わった映画が3本公開されるのです。

もちろん、単純にシナリオライターの仕事としてならそういうこともあるかもしれません。ですが、三本とも立場が違う形での関わりというのは、珍しいのではないかと思います。


1本目は、すでに上映中の映画クレヨンしんちゃん オタケべ!カスカベ野生王国

これは、双葉社の社員として、メインプロデューサーの立場で関わっています。

僕の会社での今の仕事が出版社の版権管理や映像化の窓口なので、会社が出資した作品に関しては製作委員会のメンバーとして、プロデューサーに名を連ねる事があるのです。

普段は宣伝会議への参加などの事務作業的な役割が多いのですが、映画版『しんちゃん』に関してはシナリオ会議に参加して、他のメンバーと一緒にホン作りの打合せをやりました。

映画版『しんちゃん』といえば、原恵一(はらけいいち)監督嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦などの大傑作があります。

ただ、これらはやはり原恵一氏という傑出した映像作家の才能があってこその名作だったと思います。

個人的には、作品作りにおいて、あまりそのテイストにこだわっているとかえって袋小路に入ってしまうのではないかと思っていました。

もう一度初心に返って、とにかくシンプルに、笑ってワクワクしてちょっとジンと来る娯楽映画を作ろう。そういう狙いでできた作品です。

試写会ではラストまで子ども達の笑い声がとぎれなかった(絶えなかった?)と聞きますので、その狙いはなんとかクリアできたのではないかと思っています。

歴史のあるシリーズですし、国民的キャラクターです。その魅力を守りながらしかし飽きられないようにチャレンジしていく。

監督や脚本家、制作プロダクション「シンエイ動画」のスタッフの方達、現場のみなさんと協力しながらも、物語にズブズブとのめりこむのではなく、客観性を持ちながら作品を作っていく。

難しい仕事ですが、やりがいもあります。

 
2本目は、4/25から公開の『劇場版天元突破グレンラガン 螺巖篇』。

これはもう『しんちゃん』の立場とは真逆で、シナリオライターとして真っ向から物語にどっぷり浸かってシナリオを書きました。

テレビシリーズの26本、その後半を2時間にまとめる総集編ですが、それじゃなくても中身の濃いシリーズだったので、短縮するためには新作を増やして短い時間で整合性をとるしかない。結果的に随分新作が増えました。60分新作という噂もありますが、計ってないので正確には分かりません。普通に考えて、2時間ちょいの映画なので、さすがに半分新作という事はないだろうと思うのです。でも感覚的にはそのくらいあってもおかしくない気がする。

納品の2日前に最後の原画が上がり、納品の2時間前にまだ修正を入れていたという、劇場用映画では信じられないギリギリの進行でした。

ダビングの段階で何もないカットがあり、Tプロデューサーは「今回は、いろんなところにあやまらなきゃいけない」という覚悟までしたそうですが、奇跡の追い込みで間に合いました。ただ間に合っただけじゃない。クオリティもかなり高いです。テンションも相当高いです。最初の試写で観たあと、情報量の多さにヘトヘトになりました(笑)。

4年間つきあってきた『グレンラガン』も、とりあえずこれが最後。

それにふさわしい出来になったと自負しています。


三本目は5/16から公開のゲキ×シネ『五右衛門ロック』。

劇団☆新感線の舞台公演を何台ものカメラで撮り編集した映像作品、それがゲキ×シネです。

詳しい説明はこちらをどうぞ。(http://www.geki-cine.jp/)

去年の夏に新宿コマ劇場で上演した『五右衛門ロック』が、映画館のスクリーンで蘇ります。

劇団☆新感線史上最高の10万人動員となった作品です。

この公演、とにかく楽しかった。出ている役者さんも素晴らしかったし、森雪之丞(もりゆきのじょう)さんの作詞もよかった。

特に、北大路欣也(きたおおじきんや)さん、江口洋介(えぐちようすけ)さん、松雪泰子(まつゆきやすこ)さんなど映像作品をメインにしている方達も多く出演しているので、映画館のスクリーンにもよく映えるのですね。共演者も言っていますが、北大路さんの目力を大きなスクリーンで観ると、ほんとに圧倒されます。

もちろん僕はこの舞台の脚本を書きました。

つまりここでは劇作家としての仕事が映画になるわけですね。

自分としては、舞台脚本が本道で、映像作品のシナリオは他流試合だと思っています。この2つの仕事は、自分の中では明確に線が引かれているのです。

会社員・シナリオライター・劇作家と、自分が3つの顔で関わっている3本の映画が、時を近しくして上映される。なかなかできない経験です。

この3本、どれも面白くできていると思っています。

よければ劇場に足をお運び下さい。3つの顔で待っています。

ちなみに僕はこのGWに、阿修羅像の3つの顔を見てきたいなあと思っているのですが。


(更新 2009/4/23 )


バックナンバー

コラム一覧

続きを読む

プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

おすすめの記事おすすめの記事
関連記事関連記事
あわせて読みたい あわせて読みたい