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かぶりもの集団「ギンギラ太陽's」にみる福岡人気質

文・中島かずき

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福岡のかぶりもの劇団、ギンギラ太陽'sを観に行って来ました。
東京公演ももう三回目。
こちらでも人気が定着してきたようで平日の夜なのに、客席は結構埋まっていました。日曜日などは満席になるとのこと。

この劇団の特色は役者が全員かぶり物をかぶって、人間ではないモノを演じることです。
飛行機や新幹線等の乗り物、デパートや駅・空港などの建築物等々、登場するキャラクターは全て人間ではないモノなのに、それでヒューマンドラマをやるというのが面白いですね。見た目が馬鹿馬鹿しいから、大真面目に熱いドラマをやっても、お客さんはそれほど抵抗なく受け入れられるのかもしれません。

今回の演目は『BORN TO RUN さよなら初代0系新幹線?引退スペシャルバージョン』。
一番最初のひかり号、初代0系新幹線が11月30日に引退するが大阪までしか走らせてもらえないことに発憤した主宰で作・演出の大塚ムネト氏が、「ならばギンギラが0系として東京を走ってやる!」と企画した作品です。
この話だけで、その意気やよしと応援したくなります。

公演チケットのもぎりは車掌さんの制服を着ているし、場内アナウンスは新幹線の車内放送をもじっているし、こういう細かいこだわりも大好きです。
物語は、廃車が決まった0系新幹線達が最後にもう一度東京をめざすというシンプルなもの。

劇中に『女ビルの一生』という作品をはさむことで1時間半の上演時間になってはいるが、『BORN TO RUN』だけだと1時間足らずでしょう。
カーテンコールでの発言やパンフレットでの0系新幹線特集の記事などから窺える大塚さんの、0系新幹線への情熱に比べると、ストーリー展開だけでいえば、あまりにストレートすぎて正直物足りなかったです。

これだけ調べているんならもっともっとエピソードが盛り込めるだろうに、もったいないなあと思ってしまうのは、エピソードを詰め込むのが好きな僕の個人的な感想かもしれませんが。

ただ、終わった後に「ああ、楽しかった。また観たいな」と思わせる魅力があるのは間違いないです。愛嬌のある集団ですね。

驚いたのは、劇団☆新感線の役者である粟根(あわね)まこととギンギラの女優である立石義江(たていしよしえ)さんが大学時代の同級生だったり、大塚ムネトさんが新感線の主宰のいのうえひでのりの高校時代の後輩、しかもクラブも同じ演劇部だったということなど、新感線とギンギラに意外な縁があったことです。

ギンギラほど徹底してはいませんが、初期の劇団☆新感線もかぶり物は多用していました。
今回の公演の中で重要な役割をする太陽の塔も、新感線で出したことがあります。いや、そんなことを自慢しても仕方ないのですが。

先に述べたチケットのもぎりや場内アナウンスの凝り方、パンフレットの充実のさせ方など、細かいことまでこだわるところはどこか新感線に似ているなと感じていたのですが、ひょっとしたらそれは福岡人の気質なのかも知れませんね。

大塚さんといのうえの、人を楽しませようという方向性がよく似ているのかなとか、チラリと思ってしまいました。

ちなみに、『女ビルの一生』というのは、大丸と玉屋という地元デパートの栄枯盛衰の物語。30年前、天神の町辺りをウロウロしていた自分としては、ディティールまでよくわかり、声を上げて笑ってしまいました。

描かれている心情は極めて普遍的な物なので、次はこっちのラインを堂々と公演してもいいのではないでしょうか。
次回も楽しみにしています。


(更新 2008/12/11 )


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プロフィール

中島 かずき(なかしま・かずき)

 劇作家、脚本家。福岡県出身。1985年より劇団☆新感線の座付き作家に。「阿修羅城の瞳」「髑髏城の七人」などの物語性を重視したエンターテイメント時代活劇"いのうえ歌舞伎"を多く生み出す。「アテルイ」で第47回岸田國士戯曲賞受賞。コミック原作や、アニメ「天元突破グレンラガン」(07、09)脚本・シリーズ構成、「仮面ライダーフォーゼ」(11)メイン脚本など幅広く活躍。脚本を手がけた「真田十勇士」(演出:宮田慶子、主演:上川隆也)が8月から上演される

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