(撮影/今西憲之)
(撮影/今西憲之)

 大型の台風21号が関西地方に甚大な被害をもたらし、1週間が経過した。

【関西国際空港の台風21号による被害の様子はこちら】

 関西国際空港(関西空港)は今、第2ターミナルだけを使って一部を運行するのみで、メインとなる第1ターミナルは、ゴーストタウンの様相だ。

 関西空港の連絡橋にタンカーが衝突した事故で損傷した橋桁は、12日から撤去作業が開始される。

 連絡橋は9月4日にタンカーが激突し連絡橋が大破して以来、片側の連絡橋に上下線を臨時で走らせ、なんとか“命脈”を保っている。

 今も残るタンカーが激突した痕跡は、頑丈な連絡橋をなぎ倒さんばかりのもので、その強烈さを思い知らされる。

 台風21号が上陸時に、関西空港の現場で地上業務にあたっていたスタッフはこう振り返る。

「午後1時を過ぎで急激に風雨が強くなった。みるみるうちに、滑走路に水があふれ追い打ちをかけるように高潮が迫ってきた。顔に水が吹き付け、目の前すら見えない状況でした」

 関西空港はメインの第1ターミナビル地下に、地盤沈下に備えたジャッキアップの設備が一番下にある。その上に電気、機械設備、そして地下1階にあたる部分にごみの集積所や空港内で働く人の休憩室などがあり、その上が一般の搭乗客が利用する、施設となっている。

「地下にジャッキアップや機械などの施設があり、浸水を防がねばならない。そこで豪雨の中、土のうを積んだりしていたが、滝のように水が落ちてきて、溢れてきた。膝くらいまでになった。さすがに上司も危ないと判断したようで『命が優先、逃げよう』といい、その場を離れた」とスタッフはいう。

 また、カーゴターミナルで仕事をしていた人はこう振り返る。

「水位が一気にあがってきて、打ち付けるような雨がさらにひどくなる。『このままでは、関空は水没だ』と上司が避難するように命じました。膝上の水をかきわけて、必死で逃げた。こういうのを命からがらというんでしょうね」と振り返る。

 台風21号が去った翌日、先のスタッフは滑走路を見て、絶句した。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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