今月16日に引退する"平成の歌姫"、安室奈美恵。彼女は何を思い、何を伝えてきたのか。ファンとして、音楽ライターとして25年もの間、安室を追いかけてきた平賀哲雄さん(40)が印象に残っている彼女の言葉を紹介する。
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――平賀さんは中学時代から安室さんのファンで、音楽ライターとして直接取材もされてきていますが、印象に残っている言葉を3つ教えてください。
一つは、2005年にリリースした『Queen of Hip-Pop』でオフィシャルインタビューを担当したときに聞いた言葉ですね。小室哲哉プロデュース時代(1995~2000年)にカラオケで歌いやすいポピュラー・ミュージックで誰もが知る存在になった彼女は、その後、洋楽志向が高く、自分がカッコいいと思う音楽を追求していくモードに入ります。しかし一時はCDのセールスが落ち、「あのころの安室ちゃんが良かった」という声が世に蔓延っていた時期がありました。自分の道を突き進むのか、迎合するのか、彼女がそれを全く考えていなかったわけがなかったと思います。そこから突き進むだけ突き進んで、結果的には7年ぶりにアルバムでオリコン1位、9年ぶりにシングル1位に返り咲くわけです。その未来を掴む上での重要なアルバムでした。
インタビューで僕が「このアルバムの曲を紅白歌合戦とかで歌ったら、みんなが度肝を抜かれて面白いじゃないですか」と言ったら、安室ちゃんがすごく無邪気な笑顔で「それやりたい! そういうの大好き」と言ったんです。この言葉は印象的でした。彼女はエンターテイナーであり、みんなを驚かせたい、びっくりさせたいという思いが強い人なんだと改めて感じました。
もしかしたら、従来のファンが苦く感じるかもしれないアプローチを、面白いと言われたことが嬉しかったのかもしれません。
――そういう軸があるからこそ、もう全盛期をもう一度自分でつくっていけたわけですね。2つ目は。