海外組が毎月のように帰国して代表戦に臨むリスクは再認識しなければならない点だ。ジーコ監督(現鹿島テクニカルディレクター)が指揮していた2002~2006年にかけても欧州組の急増によって選手に重い負担がのしかかった。現在は約10日間のインターナショナルウィークに2試合が組まれるパターンが多いため、海外から帰ってきても時差やコンディションを調整する時間的余裕は多少あるが、当時はシングルマッチデーが多く、中田英寿や中村俊輔、高原直泰らは前日に帰国して、試合が終わるや否や、それぞれがプレーする国に戻るというハードスケジュールを余儀なくされた。こうした強行日程が積み重なった結果、シドニー五輪世代の多くが30歳前後を境にコンディションやパフォーマンスを落とし、代表から遠ざかることになった。

 長谷部や本田ら、2010年南アフリカワールドカップから8年間代表キャリアを積み重ねたメンバーはトレーニングの改善や疲労負担の対策を講じるなどしたことで、30歳を過ぎてからも代表とクラブを掛け持ちできる選手が比較的多かった。

 だが、香川は「長谷部さんみたいにフル稼働できる選手はめったにいない」と語り、来年3月に大台を迎える自身の先行きを不安視していた。それは今月24日に30歳の誕生日を迎えた吉田、すでに20代後半にさしかかっている大迫勇也(ブレーメン)や原口元気(ハノーバー)にも言えること。平均年齢が高かったロシア大会の日本代表欧州組がそのまま歳を重ねていく現実の厳しさを、日本サッカー協会も森保監督もいま一度、しっかり頭に入れた方がいい。

 加えて言うと、ロシア大会に参戦した欧州組の多くが今季新天地に赴いたばかりだ。西野朗監督体制のレギュラーを見ても、大迫、原口、乾貴士(ベティス)がこの夏から新たな一歩を踏み出したところ。移籍後3試合に出場した武藤嘉紀(ニューカッスル)もドイツからイングランドと、より難易度の高いチャレンジに打って出ている。ワールドカップで出番を得られなかった遠藤航(シントトロイデン)、植田直通(セルクル・ブリュージュ)にしても欧州移籍を選んだし、最後の最後で落選の憂き目に遭った浅野拓磨(ハノーバー)、井手口陽介(ドイツ2部フュルト)、久保裕也(ニュルンベルク)がいずれも新たな環境に挑み始めた。

 こうした面々のようにクラブが変わらなくとも、香川のように指揮官交代によって微妙な立場に追い込まれている選手もいる。それだけに、新シーズンがスタートしたばかりの今、クラブを離れるのは彼らにとってマイナスになりかねない。

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選手個々の事情を勘案することは重要