■防災省の創設が急務

 わが国では、自然災害に対する人員は、内閣官房と内閣府の専任職員が100名程度に加え、ほかの省庁に関連職員が数十名いるだけである。しかも、トップは内閣府の特命大臣であって、職員は直接の部下ではない。指揮命令系統があいまいだ。これでは、国難と呼ぶべき巨大災害や大規模な複合災害が起こったとき、職員数がまったく不足する。膨大な量の災害対応業務に必要な省庁連携・調整などは不可能である。つまり、巨大災害が起これば対応に失敗することがわかっている。

 1962年に施行された災害対策基本法は、「二度と被害を繰り返さない」という法律である。言い換えれば、被害が発生しない限り、対策はとらないという貧しい時代の法律である。これを遵守し、部分改定だけを進める限り、国難に相当する災害が起これば、間違いなくわが国は衰亡するだろう。

 この国を、災害という氷山に衝突するタイタニック号にしないために、防災省を創設して減災・縮災に日常業務として取り組むことが喫緊の課題である。防災庁では駄目だ。財務省や国土交通省と同格でなければならない。

 わが国は先進国中でもっとも災害のポテンシャルが大きいにもかかわらず、その対応は過去を繰り返さないことに終始している。国難災害で国が廃れてからでは遅い。

※内容は2016年7月刊行当時のものです

河田惠昭(かわた・よしあき)
関西大学社会安全学部特別任命教授、人と防災未来センター長。東日本大震災復興構想会議委員。専門は防災・減災、危機管理。おもな著書に『日本水没』(朝日新書)がある。