この他にも薄いグレーで示した利権プレーヤーがいる。まず、自治体には、地域ごとのたばこの売り上げに比例した交付金が財務省から交付されるので、やはり、売り上げを減らすことはしたくないという事情がある。

 さらに、野党議員も、地元の飲食店などに嫌われたくないという意識が強く、規制強化を声高に唱えることはしにくいという事情がある。それを最も端的に表したのが、国民民主党の対応だ。同党は、安倍政権の案では不十分だとして、喫煙可とする対象を客席面積30平方メートル以下に限定する独自の対案を提出した。自民党の100平方メートルに比べればかなり厳しい。「対案路線」を掲げる同党の対応は、称賛されて良いものだった。しかし、衆議院の委員会採決の段階で、国民民主党は、同党案の成立のめどがないとして、いきなり、安倍法案に賛成してしまった。これは、とりあえず、一般世論向けに、厳しい姿勢を示した上で、採決では与党案に賛成して、支持層の中小飲食店の人気取りをしたということだろう。あまりに節操のない対応には驚くばかりであるが、あらためて、この利権構造の強固さを知らしめることとなった。

■マスコミが隠す「たばこ」問題

 この利権構造を語るうえで、忘れてはならないことがある。それは、JTがマスコミに対する大スポンサーだということだ。JTの2016年度決算資料では、広告宣伝費は261億円にも上る(この他に販売促進費1248億円があり、ここにも事実上の広告宣伝費用が入っている可能性がある)。このため、たばこ批判は、テレビ・新聞・雑誌では非常にやりにくい。例えば、JTがスポンサーになっている番組では、たばこ批判の放送をすることができなかったり、トーンを弱めなければならないということが起きる。雑誌でも、JTの広告が掲載される号では、たばこ批判の記事は書かないということもある。筆者もあちこちで、そういう事例を目撃してきた。今回の受動喫煙に関する記事も本来は、連日大きく報道されてもおかしくないのだが、記事の掲載回数も少なく、しかも、政府法案批判のトーンは、働き方改革法案やカジノ法案など他の法案に比べて著しく弱い。

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