さらには、共産党の辰巳孝太郎参院議員が公開した音声データにも昭恵夫人の名前が登場した。売買交渉が佳境となっていた2016年3月、籠池氏らと近畿財務局、大阪航空局が協議した場で、籠池氏は昭恵夫人と電話でやりとりしていることを持ち出していた。
籠池氏はその際、「昨日、我々が財務省から出た途端に、安倍夫人から電話がありましてね。(昭恵夫人は)『どうなりました? がんばってください』と言ってはったけど。何と答えたらええのか分からへんわ」と発言。このことについて安倍首相は2日の国会で「妻に確認したが、電話していない」と否定した。
なぜ、ここにきて新しい文書や見解が次々に明らかになったのか。情報公開で資料を入手した上脇氏は、こう話す。
「これまで財務省は、情報公開請求をしても『交渉記録は存在しない』との回答だった。それが、今回の1月4日付で開示された文書のなかに、『財務省の内部で検討された法律相談の文書』という形で開示されました。この文書の保管期限は5年と明記されています。佐川前局長は、『交渉記録の保存は1年未満』と国会で答弁していますが、より重要な交渉記録が機密性の低い法律相談書より保存期間が短いというのは不自然。そのなかで文書を開示したのは、国民の怒りが影響したのかもしれません」
“鉄の結束”を誇る財務省は、これまで安倍政権を徹底的に支え続けてきた。他省庁の官僚からは、加計学園問題で安倍内閣の“圧力”を記した内部文書を流出させた文部科学省と比べて「財務省はやっぱり違う」と言わしめるほどだった。
国税庁長官に“栄転”した佐川氏も、沈黙を貫いている。昨年7月に就任して以来、一度も記者会見を開いていない。麻生太郎財務相は「国税庁所管以外に関心が集まっていたから実施しないと決めた」(1月29日、衆院予算委員会)と語り、大臣公認のダンマリを決め込んでいる。
一方、日本税理士会連合会が発行する業界紙「税理士界」(1月15日付)のインタビュー記事には、満面の笑みを浮かべた写真とともに佐川氏が登場。国税庁という組織のリスク管理について、「縦・横・斜めの情報交換を密にする。(中略)些細な問題でも対応を誤れば、組織の信頼を失ってしまいます。それを防ぐためにも、リスク管理として、必ず上司に報告するよう徹底させています」とまで語っている。