テレビ番組「クレイジージャーニー」や写真集『奇界遺産』でもおなじみ、世界各地の“奇妙なもの”を撮り続ける佐藤健寿さん。最新作『THE ISLAND 軍艦島』がいよいよ発売になります。チェルノブイリをはじめ世界中の廃墟を訪れた佐藤さんが、なぜいま軍艦島をテーマに選んだのか? その魅力についておうかがいしました。
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――佐藤さんは世界中の廃墟を探訪されていますが、今回軍艦島をテーマに選んだ理由は?
軍艦島は2015年に世界遺産にもなって、今では保存作業が進められていますが、やはり建造物の痛みは激しく、今後も長きにわたって現在の姿を維持できるかどうかは難しいともいわれています。だからまだかろうじて当時の姿が残っている間に、軍艦島を撮影して本にしたいとは思っていました。とはいえ、すでに多くの写真家が撮影し、たくさんの関係書籍が出ている場所でもあるので、どう撮るべきか、またどんな写真集にするかは色々と考えました。試行錯誤の末に、一遍の詩を軸にしたこと、フィルム・ドローンを駆使したことなどによって、結果的には他にはない、なかなか興味深い本になったと思います。
――軍艦島が他の廃墟と大きく違う点は何でしょう?
一般に日本でいわれる廃墟というと、こぢんまりとした廃屋的なものとか、たとえば地方のホテル廃墟なんかを想像する人が多いと思います。一方、海外の有名廃墟というと、戦争や天災などで出来た大規模な廃墟が多い。ただ、それらと比べても軍艦島は一歩も引けを取らないどころか、おそらく世界でも並ぶもののない廃墟ですね。もちろん日本にも戦争遺産や産業遺産は多いですが、国土が狭い分、割と整備されていたり、保存されていたりもする。だからこれだけの規模の場所が廃墟のまま残されているという意味でいえば、軍艦島は王道的な廃墟でありながら、日本においては例外的な廃墟だともいえると思います。
――そうした観点から「廃墟の王」というコピーが生まれたのでしょうか?