アメリカ音楽の最高の栄誉であるグラミー賞。第60回という節目の年の候補作品には、“グラミー賞らしい”ものが多数選ばれた。音楽ライターの大友博さんが解説する。
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Grammy Awards Ceremony、グラミー賞授賞式まであと約1カ月となった。
すでに各賞の候補者や概要も発表され、さまざまな形で報道されているようだが、あらためて紹介しておくと、第60回という大きな節目の開催となる今回の授賞式は、1月28日、ニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行なわれ、現地時間午後7時30分から生放送される(日本ではWOWOWで29日午前8時30分から)。
ちなみに、グラミーの会場は「ロサンゼルスのステイプルズ・センター」というのがほぼ定着したパターンとなっていて、ニューヨークでの開催は、ノラ・ジョーンズが大きくクローズアップされることとなった2003年の第45回以来、15年ぶりとなる。また、例年よりも1週間ほど開催時期が早くなっているのだが、これは「冬季オリンピックを考慮して」ということのようだ。
ロサンゼルスでのグラミーは何度か観たことがある。もっとも寒い時期の日本をまさに脱出するような気分で飛行機に乗り、LA国際空港に降り立って外に出ると、もう半袖の気分。正直に告白すると、グラミー本体よりもあの感触が楽しみで行っていたようでもあった。
ところが、2003年のニューヨークは、一面の雪景色で、マディソンの西側を流れるハドソン・リヴァーからの風が言葉ではうまく表現できないほど冷たかった。いや、痛かった。たしか、生まれてはじめてニット帽などというものを買った記憶がある。いわゆる裏事情はよくわからないが、寒さに加えて、この政治状況下では当然のことながらテロへの警戒も厳重になるはずであり、NY開催を心から歓迎し、喜んでいるなどという人はほとんどいないのではないだろうか。