東京電力は福島第一原発(フクイチ)事故のときに記録していた、テレビ会議の模様を公開した。しかし、この内容にもごまかしがあると、フクイチの幹部は言う。
3月13日午後3時半ごろのビデオ映像。放射線量が急上昇している。吉田昌郎所長(当時)が、「やばい」「かなりの勇気がいる」と緊迫した声を張り上げている。
そして、「これはもう、ジジイ決死隊でいこうか」と、制御が利かなくなった原子炉へベテラン職員を突入させるプランを口にする重大局面の様子が映し出されていた。
「吉田所長の『ジジイ決死隊発言』のとき、数人の連中が顔を見合わせ、誰にするとばかりに、話し合いを始めた。私が鮮明に覚えているのは、周囲で『メルト』という声がする中で吉田所長が3号機の爆発前に『もう賭けだ』と言っていたことです。急速に放射線量が上がり、死ぬかなと覚悟しました」(フクイチ幹部)
だが、緊張感があるのはフクイチの現場だけだ。「2号機への海水注入のときに『燃料が腐りもったいない』という発言が報道で出ていた。吉田所長が本店とかなり言い争いになったシーンがあった。現場では、『本店、何言ってんだよ』などと不満の声が上がったが、この部分の音声はない」(フクイチ幹部)
※週刊朝日 2012年9月21日号