青藍泰斗のエース石川翔 (c)朝日新聞社
青藍泰斗のエース石川翔 (c)朝日新聞社

 6月17日開幕(雨天順延で試合は18日から)の沖縄大会からスタートし、全国3839校が参加した高校野球の地方大会も8月1日に全ての地区で幕を閉じた。毎年言われていることではあるが、ドラフト候補の中には地方大会で涙を飲む選手は少なくない。昨年のドラフトで指名された高校生のうち7割近くは地方大会で敗れているのだ。

 そこで今回は残念ながら最後の夏の甲子園に出場できなかった有望選手をベストナイン方式で紹介する。なお今回の対象は来春以降、甲子園出場のチャンスが残されている下級生は除外し、3年生のみから選出した。

 まず投手は迷うことなく石川翔(青藍泰斗・栃木)を選出した。圧巻だったのは6回コールドで石橋を破った栃木大会準々決勝でのピッチングだ。初回から常に140キロ台後半を維持し続け、6回には自己最速となる151キロもマーク。ただ速いだけでなくフォームの完成度も高く、低めに集められる制球力と変化球のキレも一級品だ。昨年1位でプロ入りした今井達也(西武)、藤平尚真(楽天)と比べても石川の方が一枚上と感じるほどだった。準決勝で作新学院に惜敗したものの、総合力では間違いなく高校ナンバーワンと言える。

 捕手は全国的に見ても好素材が多かったが、スケールの大きさで言うと村上宗隆(九州学院・本)がナンバーワンだ。熊本大会6試合で8三振を喫したように脆さはあるものの、大きな欠点のないフォームでとらえた時の打球と長打力は全国でも指折り。強肩で守備の能力も高く、打てる捕手としてぜひプロで育ててもらいたい素材だ。センバツにも出場した古賀悠斗(福岡大大濠・福岡)、篠原翔太(報徳学園・兵庫)もぜひ高いレベルで見てみたい選手である。

 続く内野手だが、ともにドラフトの目玉である清宮幸太郎(早稲田実・西東京・一塁手)と安田尚憲(履正社・大阪・三塁手)は当然選出となる。清宮は高校通算最多本塁打記録更新の期待がかかる中でも、そのプレッシャーを全く感じさせないバッティングを見せた。厳しいマークの中で打率5割、4本塁打の成績は立派の一言だ。特に準決勝の八王子学園八王子戦で放った一発は外角低めの難しいチェンジアップを左中間に放り込んだもので、高い技術とパワーが凝縮されたものだった。清宮に比べると報道は少なかったが、安田も確かな成長を見せた。準決勝で大阪桐蔭に敗れたものの7試合で打率6割3分2厘、3本塁打の成績を残し、三振もわずかに二つ。4回戦の今宮戦では今までなかった左方向へのホームランも放った。甘いボールを一振りでとらえる凄みは清宮と共通した長所である。

 続くセカンドは安里樹羅(健大高崎・群馬)を選びたい。攻守にスピード溢れるプレーが持ち味で、チームのスローガンである“機動破壊”をまさに体現している。体は大きくないものの年々パンチ力も向上しており、この夏は140キロ台中盤のストレートも見事に弾き返すバッティングを見せていた。将来的には田中広輔(広島)のような選手になれる可能性は十分に秘めている。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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