映画「忍びの国」は、史実・天正伊賀の乱を題材にしている(※イメージ写真)
映画「忍びの国」は、史実・天正伊賀の乱を題材にしている(※イメージ写真)
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 批判やプレッシャーもどこ吹く風。前に出よう、勝とうという気持ちとは無縁である。歌、ダンス、演技、アート……と多彩な才能をもちながら、誇示することは決してない。自身初の時代劇映画『忍びの国』の主演でも注目を集めている、嵐のリーダーである大野智が。『アエラスタイルマガジン 35号』(朝日新聞出版)で「プレッシャーは感じなかった」と語った撮影現場とは。インタビューの一部を特別に紹介する。

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 インタビューは定刻よりも30分近く早く始まった。

 さすが「好きな言葉は“3時間巻き”」を公言する嵐のリーダー、大野智である。その日は9媒体ものインタビューが分刻みで詰まっており、そのたびに異なる衣装に着替えなければならなかったがとにかく支度が早い。休憩時間もほとんど取らない。それでいてひとつひとつの質問に丁寧に答え、カメラの前に立てば表情もポーズも完璧に作り上げる。

 7月1日に公開される映画『忍びの国』の主人公・無門は、普段は寝っ転がってガツガツした様子はまったく見せないが、戦となれば人並み外れた身体能力を発揮し、縦横無尽に飛び回る忍者。中村義洋監督は、そのキャラクターに大野自身を重ね合わせた。

「昨年3月に顔合わせをして、『大野くんにぴったり』『そのままで無門になるから』と言われた覚えがあります。普段の自分がそんなふうに見られているとは正直よくわからないけど、そう言われることは別に嫌じゃないです。あ、そうなんだ、と(笑)」

 姿勢や声色を変えるなどの役作りはほとんどしなかったというが、本当にただそのままでいるわけもなく、狡猾で人を裏切ることはおろか殺(あや)めることすら平気な残忍さを持ち合わせているのは、まさしく無門。素の大野を彷彿とさせながらも、凄腕の忍者が憑依しているようなムードが不思議な作品である。

 クライマックスでは共演の鈴木亮平と息をのむような激しいを繰り広げる。しかも体が触れんばかりの至近戦。一瞬でもタイミングを間違えば、フェイクとはいえ鋭い刀が打ち下ろされる。

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