8月15日、世界基督教統一神霊協会(統一教会)創始者・文鮮明(ムンソンミョン)氏(92)の「危篤」が報じられた。統一教会を長年追及してきたジャーナリストで参議院議員の有田芳生氏は言う。

「文氏は、植民地支配を含めた日本の若者たちの贖罪意識を利用し、霊感商法などで資金を巻き上げた、カリスマ的な宗教者です」

 統一教会は、1954年に文氏が韓国で創設し、92年には、「国際合同結婚式」に元歌手の桜田淳子さんや、元新体操選手の山崎浩子さん(その後脱会)が参加したことで注目を集めた。しかし、信者の家族との対立、壺などを高値で販売する霊感商法が社会問題化した。

 全国霊感商法対策弁護士連絡会の紀藤正樹弁護士によると、統一教会の霊感商法による被害相談額は、93年のピーク時に約122億円にのぼった。

「被害相談額は去年までの25年で1100億円をゆうに超える。2009年に『新世』(統一教会信者の印鑑販売会社)事件が摘発されて激減したが、それでも去年は10億円を超える被害相談があった」(紀藤氏)

 また、有田氏は、今後の焦点として「家族の勢力争い」を挙げた。

「当面は鮮明氏の妻が前面に出て、引き続き四男が企業を、七男が宗教を継ぐだろうが、彼らと対立している三男がどうするか」

 紀藤氏はこう警告する。

「今後、統一教会は分裂し、熱心な信者は過激な行動に走る可能性がある。しかし『地上天国』を実現せずに、文氏が亡くなるようなことがあれば、文氏の教えは嘘だったことになる。文氏は『2013年1月13日までに責任を果たす』などと予言していたが、それも外れることになる。統一教会は、信者が努力しなかったからお父様(文氏)が使命を果たさなかったと言い訳するだろうが、文氏の嘘がはっきりした以上、霊感商法で多くの被害者を出した統一教会は即時に解散すべきだろうと考える」

※週刊朝日 2012年8月31日号