ジャーナリストの田原総一朗氏は、福島の原発事故調査・検証委員会から公表された最終報告を読み、「原発は是か非か」に対する判断材料がいっさい書かれていないことに不満を感じたという。
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7月23日、政府の事故調査・検証委員会、いわゆる畑村委員会が最終報告を発表した。政府関係者や東京電力幹部など772人に聴取した報告書は、826ページにも及んだ。
これで四つの報告書が出そろったことになる。だが、率直に言うと、私にはいずれの報告書にも少なからぬ不満が残る。
畑村委員会は、東電が津波発生後に適切に対応していれば、メルトダウンは防げた可能性がある、と示唆している。深刻な事故になったのだから、東電、そして政府に重大な不手際があったことは当然だろう。
しかし、私が事故調に期待したのは、詳細な報告書の公表だけではなかった。知りたかったのは、東電や政府の不手際をなくせれば、原発を稼働し続け、さらに新たな原発を新設してもよいのかどうかということだ。
あるいは、人間が行う以上、ミスというものは必ず起きる。原発はひとたび事故を起こせば、広大な地域が人の住めない土地となり、長い期間にわたって放射能の深刻なダメージが残る。その被害の大きさはいまも解明されていない。そうした危険な原発をコントロールするのは、人類には不可能ということなのか。
少なからぬ専門家たちが長い時間をかけて、巨額の資金と人的資源を費やして調査したのだから、私たち国民がそうしたことを判断できる、せめてヒントのようなものが出てくるのではないかと期待していたのだ。だが、これらの報告書は、まるでそれがタブーであるかのように、その点にはまったく触れていない。
※週刊朝日 2012年8月10日号
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