五輪は初出場ながら、世界選手権3連覇中のレスリング女子フリースタイル48キロ級・登坂絵莉。決勝でマリア・スタドニク(アゼルバイジャン)に残り13秒から逆転し、金メダルを獲得した。
初戦の2回戦はズルディス・エシモワ(カザフスタン)に快勝して好発進、準々決勝はハレイ・ルス・オーゲロ(米国)に逆転勝ち。準決勝では、2月のアジア選手権で敗れた孫亜楠(中国)を下してリベンジを果たした。決勝はリードを許したが、終了間際に相手の右足を取りに行き、残り2秒で逆転、判定勝ちした。
浜口京子に「気合だ!」と活を入れるアニマル浜口、吉田沙保里にタックル重視の攻撃型レスリングを叩き込んだ栄勝さん(故人)……。レスリングの女王には熱血漢で娘思いの父がいる。登坂にも父と歩んだ物語があった。
登坂の父・修さんは高校時代、全国でもトップクラスの実力の持ち主だった。中学生のころは柔道に打ち込み、高校入学後にレスリングに転身して2年生で国体制覇を果たしている。ただし、優勝したのはグレコローマンの部。フリースタイルで争われるインターハイは、2、3年生といずれも小林孝至(後のソウル五輪金メダリスト)に惜敗し、決勝進出を逃した。
修さんによると、登坂がレスリングを始めたのは、9歳の時。長い髪でフリルの付いた服が似合う女の子だったらしい。修さんは当初、娘がレスリングの選手になることを歓迎しなかったという。