脱原発を掲げる「環境エネルギー政策研究所」所長の飯田哲也氏(53)が立候補したことで、一躍、日本のエネルギー政策を占う台風の目となった山口県知事選挙(7月29日投開票)。

 山口といえば、佐藤栄作元首相や安倍晋三元首相らを輩出した"超"保守王国だけに、4人の候補者のうち、自公の推薦を受ける元国土交通審議官、山本繁太郎氏(63)が圧倒的に有利と言われていた。が、ここに来て情勢が大きく変わってきているという。取材するジャーナリストの横田一氏が言う。

「告示直後の飯田氏の支援者は女性と若者が中心でした。ところが最近は、なし崩し的に『3党合意』に至った自民党に反感を感じる元自民支持層にまで勢力を広げつつある。その勢いを感じているのか、自民党は石原伸晃幹事長、小池百合子前総務会長、片山さつき参院議員ら有名議員を次々と応援に投入するなど、総力戦の様相を呈しています」

 告示前の7月7日には、安倍元首相も地元・山口入り。山本氏の総決起集会でこうぶちあげた。

「日本がデフレから脱出するためには、日本銀行に金融緩和をやってもらうと同時に、政府が公共投資を行うことで火をつけないといけない。未来への投資になるものに対しては、積極的に政府がお金を使っていく。そのために建設国債を発行して、日銀が買い取る方法が一番いい」

 後を受ける山本氏も、

「何といっても、経済振興、雇用の確保であります。そのためには、港湾をはじめ、道路のアクセスといった仕事をする基本的な環境整備を、最大限の努力で進めていかないといけない」

 つまりは、日本の経済復活のためには、やっぱり「公共事業」ということらしい。さすが、消費増税の3党合意を受けて「10年で200兆円」の公共事業と鼻息荒い自民党らしく、地元への利益誘導に公共事業のバラまき……と、さながら一昔前の選挙戦を見ているようだ。

※週刊朝日 2012年8月3日号