「リュウグウノツカイ」という魚をご存じだろうか? 銀白色の体に、長く伸びた赤い背びれと腹びれが美しく、泳ぐ姿は幻想的だ。その名の通り、竜宮城へいざなうような雰囲気を漂わせている。南方海域の深海に生息し、世界的にも確認された例が少ない珍魚だ。
この魚は、一見すると巨大なタチウオのようだという。富山県魚津市にある魚津水族館の稲村修館長によれば、タチウオとの違いは、妖艶な赤く長いひれがあるかどうか。銀と赤という、まるでウルトラマンのような色の組み合わせは、図鑑などで見ても強烈な印象を与えるらしく、子どもの人気も高い。同県射水市の新湊地区では、リュウグウノツカイは「おいらん」と呼ばれている。
「日本海では、人魚のモデルはジュゴンではなく、リュウグウノツカイとの説もありますね」(稲村館長)
人魚は、赤い髪で肌が白く、背が高く、海が荒れた後に出現するといわれている。「姿を現すと、地震や天変地異が起こる」という言い伝えもあるそうだ。
実はこのリュウグウノツカイ。日本海で目撃情報が相次いでいる。2009年末に富山湾で目撃されて以降、富山湾での出没は7年間で12件。新潟、福井、山口、鳥取などでも姿をみせている。
南方海域では体長が10メートルを超えるものもいるが、富山湾に現れたのは最大でも4.3メートルほど。09年に黒部川左岸で見つかったものは約4メートルで、魚津水族館に保存されている。近年目撃情報が増えているダイオウイカと同様に、南方海域から対馬海流などに乗って日本海に入ってくると考えられている。
「リュウグウノツカイが日本海沿岸に出没するようになったことについて、地球温暖化との関係や大災害の予兆なのか、といった質問をよく受けますが、因果関係はわかりません」(前出の稲村館長)
そんな神秘的な魚はどんな味がするのだろうか。実際に食べたことがある魚津水族館飼育研究係学芸員の伊串祐紀さんに話を聞いてみた。