「もう小保方氏は研究者人生に完全に見切りをつけたなという印象です。手記を出さなければまだ首の皮一枚、いばらの道ではありますが研究者としての道は残されていましたから」
あまり現実的ではないが、大学や研究機関に属さずとも研究活動は一応続けられる。その研究を発表する場さえあれば、研究者ではいられるからだ。もっとも今、小保方氏を受け入れる権威ある学会はないかもしれない。しかし、いつか風向きが変わる可能性も捨てきれず、研究者として復活の目もわずかに残されていた。
「手記では、かつて小保方氏を指導した山梨大学の若山照彦教授に関する記述が目立ちます。これは新たな火種となりかねない。そんな手記を発表する小保方氏を迎え入れる学会は恐らくないでしょう。研究者としては終わりです」(前出の理研関係者)
若山山梨大教授とは、騒動の最中、「小保方氏は自分の渡したマウスを使っておらず、別のマウスとスリ替えた」「私は小保方氏に裏切られた」とマスコミに語り、STAP細胞研究に関わりながらも、当時、小保方氏が“悪玉”と目されたのに対して、“善玉”と目された人物だ。その若山教授について、小保方氏は手記でこう述べている。
<若山先生が作った細胞を、若山先生ご自身が調べて「おかしい」と言っている異常な事態に(以下、略)>
<もし私がES細胞をSTAP細胞だと偽って渡していたのなら、もともと増殖している細胞が渡されていたことになり、若山先生が観察した、増殖能の低いSTAP細胞からの無限増殖する幹細胞への変化は起こるはずがなく、気がつかないはずはないのではないだろうか>
騒動の当事者による一方的な話かもしれない。しかしここにもまた真実がある。冒頭部で紹介した週刊誌の編集長は手記を読み終えた後でこう述べた。
「この手記は、いわゆる“ムネオ疑惑”に連座、『国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社刊)を著した元外務省主任分析官で作家として復活した佐藤優氏(56)を彷彿とさせます。理系版、女性版の“第2の佐藤優”になって頂きたい」
作家かタレントか。アカデミズムの世界に“絶縁状”を叩きつけた小保方氏の手記出版で、マスコミ各社による“争奪戦”はますます激化することは間違いなさそうだ。
小保方氏のメディア露出で、「STAP細胞」を巡る疑惑がつまびらかになる日もそう遠くはないのかもしれない。何が真実か。世論は固唾を飲んで見守っている。
(フリーライター・川村洋)