インターネット上でのふとした発言や投稿が、不特定多数のネットユーザーの興味や怒りを買って起こる“ネット炎上”。自分は個人情報を公開していないし、気を付けているから大丈夫、と思っていないだろうか。それでも、「こんな大ごとになるとは思わなかった」と後悔するのがネット炎上だ。
企業の炎上対策などを手掛けるエルテス(東京都港区)が、2015年の「ネット炎上速報総集編」を発表した。同社が24時間365日、ネット上での炎上を記録して作成した「炎上データベース」によると、月ごとの炎上件数は、いずれの月も14年を上回った。12月についても、既に14年の件数を超えている。
同社によると、大きな原因としてはSNS利用者数の増加があるが、それ以外にスマートフォンの性能向上も挙げられるという。つまり、スマホのカメラで鮮明な画像が撮影できるようになったため、知らず知らずのうちに、投稿した写真に個人が特定できるヒントを盛り込んでしまうというのだ。
例えば、懸賞に当選し、「旅行が当たりました!」と通知はがきの写真をアップしたところ、住所などの個人情報が写り込んでしまったケース。拡大すると、以前のスマホや携帯電話では分からなかった情報が読み取れるため、そこから大学名や経歴などが一気に特定され、さらされてしまう。
同社の担当者は、こうした被害を少しでも防ぐためには、「投稿前のチェックはもちろん、SNSの公開範囲設定を見直すことが大切だ」と話す。「タレントなどではない一般の人が、すべて公開するのは必要性がない上にリスクが高い。ささいなきっかけで人生を棒に振る可能性も留意したほうが良い」と警告する。
また、SNSを使いこなす能力が高い若者世代が陥りやすい炎上例としては、“若気の至り”に関するものがあるという。交際中の彼氏や彼女とのキス動画などをネットに上げ、時間が経過した後に炎上するケースなどだ。担当者は「リベンジポルノではないが、長期的な視点でリスクを考える意識が欠けている人もいる」と話す。
ひとたび炎上すると、投稿を非公開にしたり、削除したりしても、スクリーンショットなどの画像データは延々とネット上で回り続ける。担当者は「炎上から何年もたち、(世間では)忘れられてしまっても、人物や企業の名前で検索すると残っている。リスクに対するリテラシーをもっと高めていく必要がある」と指摘する。企業も同じで、「謝罪や信頼回復と言った炎上後の後始末にかかる費用を考えると、リスク管理へのコスト意識を変えた方が良い」と話す。