もはや安全と水はタダではない。無差別殺傷事件が相次ぐ殺伐とした時代。その刃が自分や家族に向けられたとき、どう対処すればいいのか。被害にあわないための自衛策を専門家に聞いた。
法政大学文学部の越智啓太教授(犯罪心理学)によれば、無差別大量殺傷事件の難しさは、犯す人間の最終目的が「自らの命を絶つこと」だからだという。
「米国では、警官の前でわざと射殺されるような行動を取り、殺してもらうことで間接的な自殺(スーサイド・バイ・コップ)が可能ですが、警官がほとんど発砲しない日本では、罪を犯すことで司法システムにより間接的に自殺させてもらおうとするんです」(越智教授)
命知らずな上に、明確な動機もなく、ターゲットも不特定。そんな"無差別"殺傷事件に、有効な自衛策はあるのだろうか。
万が一、武器を持った犯人と対峙するような事態になったときに、どう振る舞うべきか。「犯人に背中を見せない」ことが大事だと専門家は言う。
元警察官でクレーマー対応の助言をしている援川聡さんは、
「マタギの人々は山でクマに遭遇したとき、クマの動きを注視しながら遠ざかるといいます。通り魔も同じ。視界の外に犯人をおいてはいけない」
と言う。
危機管理コンサルタントの田中辰巳さんも同意見だ。
「通り魔は逃げる人を追いかける傾向がある。後ずさりしながら、相手の行動を確認し、建物内に逃げましょう」
※週刊朝日 2012年7月13日号