原料価格の上昇を受けてアイスメーカー各社が値上げに踏み切る中、赤城乳業が販売する「ガリガリ君」は、1991年に10円値上げして以来、60円という価格を守り続けている。
赤城乳業が1964年に発売した「赤城しぐれ」は、翌65年から66年にかけて爆発的なヒットを記録。76年には東洋一の規模といわれた工場を建設するなど、順調に業績を伸ばしていた。ところが、79年の第二次オイルショック時に主力商品だった赤城しぐれを値上げしたところ、売り上げが低迷。工場のラインが止まるかという危機的状況に陥った。そんな状況を打開するために開発されたのが、ガリガリ君だ。
「子供が遊びながら片手で食べられるかき氷(赤城しぐれ)が出来ないか?」という発想から、80年に商品開発をスタート。だが、最初はかき氷を型に流し込んだだけのスティックアイスだったため、店頭で陳列する際に崩れてしまったり、食べる時にスティックが抜けてしまったりと、クレームの嵐となり、またもや頭を抱える状況に。そこでかき氷をアイスキャンディーでコーティングして崩れにくく加工、81年にとうとう現在のガリガリ君が完成したのだ。
当初はソーダ味とグレープフルーツ味とコーラ味の3つのフレーバーで始まったガリガリ君だが、これまでに発売されたフレーバーは80種類以上にもなる。そして今年、ガリガリ君発売34周年を記念して、当時のコーラ味パッケージを再現した「復刻版」を発売。「どうしてそんな切りの悪い数字で」と突っ込みたくなるズレも赤城乳業らしいところだが、発売当時から定番のコーラ味を、再度アピールする狙いもあるのだという。
発売当時のガリガリ君は歯茎までむき出しで、なかなかに強烈だ。当時小学生だった赤城乳業マーケティング部の萩原史雄さんは「私自身、意味が分からない汚いパッケージに驚いた。なんだこれはと思ったのに、ついわけもわからず買ってしまっていた記憶がある。今の子どもたちがどう反応するか楽しみ」と語る。
ガリガリ君は、当時消えつつあったガキ大将をイメージしたもので、子どもたちに外で元気よく食べてほしいという願いが込められているという。しかし、発売から18年後の99年に行なった市場調査で、ガリガリ君のイメージが「田舎臭い」「汗が泥臭い」「歯ぐきが汚い」など、消費者には大不評だったという衝撃の事実が明らかになった。特に女性はほぼ全否定で「絶対に買わない」とまでいわれてしまったのだ。
そこで初のテレビCMを行った2000年以降、キャラクターを3Dにしてみたり、外見を幼くしたりと、試行錯誤を重ねてイメージアップに務めている。女性を意識した「ガリガリ君リッチシリーズ」の展開などもあり、顧客の7割が男性という状況から、男女比も等分になってきたそうだ。
コーンポタージュ味やナポリタン味などのガリガリ君を発売するたびに、ちょっとおかしな挑戦がネットで話題になる赤城乳業だが、なんと30年以上前から「イクラ丼アイス」や「ラーメンアイス」といった、少しズレたアイスの開発・販売を行なっている。実は赤城乳業の企業メッセージは「あそびましょ」、何よりも大切なのは遊び心なのだ。
「変わったのはインフラだけで、昔からやっていることは変わらない。これからも“くだらなさ”に突き抜けたメーカーとして冒険をしていくので、期待してほしい」(萩原さん)