いつの時代も上司は悩んでいる。曰く、部下が思った通りに動かない、仕事を覚えない、責任感がない、アイディアがない、やる気がない……。こうして、いつの世もオジさんたちは「今の若い者は」と世代論を振りかざして、自分を納得させようとする。しかし、これはおそらく昔から変わらない。30年前に「今時の若者は」と言われていた当人たちが、同じように「若い奴らのことはよくわからない」と言っている。
もちろん「若い奴ら」にもそれなりの言い分はある。しかもその言い分は、男女でかなり違うらしい。
転職情報サイト「エン転職」(エン・ジャパン株式会社)が行った上司についてのアンケートによると、1985年以降に生まれた20代の男女が理想とする上司像は、大分違う。
過去に尊敬する上司に出会ったことがあるという人に、上司のどこを尊敬していたのか聞いたところ、男女平均の1位は同率で「いつでも相談できる雰囲気がある」「リーダーシップがある」(ともに33%)となった。男女別のベスト3は次の通り。
■20代男性
第1位:リーダーシップがある(40%、20代女性:27%)
第2位:視野が広い(33%、同30%)
第3位:決断力がある(30%、同33%)/部下・後輩の面倒見が良い(男女ともに30%)
■20代女性
第1位:いつでも相談できる雰囲気がある(36%、20代男性:28%)
第2位:人によって態度を変えない(34%、同26%)
第3位:決断力がある(33%、同30%)
こうしてみると、男女で上司に求める資質に大きな差があることがわかる。実際に「上司にかけられた言葉・アドバイスの中で、特に印象に残っていること」を聞いたところ、男女それぞれの傾向を示すエピソードが寄せられた。
例えば、20代男性では「失敗するなら積極的にやって失敗しろ。そうすれば成長する」「自由にやっていい、責任はおれがとる」といった、リーダーシップを感じるエピソードが多い。
一方、20代女性では「自身の置かれた環境の中で、最も重要だと思うことをやりなさい。どんな選択をしても、支援者でいるから」「職場の人間関係で悩んだ時、『他人と過去は変えられないけど、自分と未来は変えられる。人の期待に応えるのではなく、まず自分の気持ちに応えなさい』とアドバイスをもらった」といった、きめ細やかな対応が求められていることがわかる。
男女で理想が違っているのだとしたら、各々の特性に留意した上でコミュニケーションを図ることが、今の上司には求められているといえる。「今時の若い者は」でひとくくりにはできないのだ。
では逆に、若者はいずれどんな上司になりたいか?
1位はムードメーカータイプで20%、2位は正義のヒーロー/ヒロインタイプで19%、3位は親友タイプで18%、4位は学者タイプで13%が選ばれた。この4タイプで7割を占める結果となり、残りのタイプはあまり目指したくない上司像といえそうだ。
なりたくない上司は、「背中で語る“父親”タイプ」(10%)、「教育視点を大事にする“先生”タイプ」(9%)、「危険を顧みない“切り込み隊長”タイプ」(5%)、「世話焼き“母親”タイプ」(4%)、「熱血!“体育会系”タイプ」(2%)だ。かなり昭和の匂いがするのではないだろうか?
“友だち親子”のように、親子のあり方まで変容を遂げた現代では、上から目線にみえる熱血指導者タイプは敬遠され、親しみやすく、同じ目線でいながらも、いざとなったら“責任をとってくれる”、そんな上司が求められているといえそう。結局、いつの時代も、上司には苦難がつきもののようだ。