「(若い女の子は男性に)やっぱり少女性というもので、取り入ろうと思うよね。森ガールというのはそういった少女性をテクニックにして引っぱっといて、がぶりと食う」

「森ガールは、草食系の男たちを狩りに行っているんですよ。草食に食ってもらう草になればいいわけです」(注2)

 自信のない男性は、「赤文字系雑誌」を読んでいそうな感じの女性を見ると、馬鹿にされるのではないかと引き気味になります。いっぽう「森ガール」や「オリーブ少女」には、そういう怖い印象は抱きません。

 そんな「自信ない系男子」にターゲットをしぼり、コンスタントにモテている女性もいます。彼女たちは、湯山のいうように「少女性」で相手を引きよせようとして、「森ガール」や「オリーブ少女」をよそおいます。

 あからさまにモテをめざしている女性は、相手をあまり幻滅させることはありません。そういうタイプとつきあえる男性しか、そばに寄ってこないからです。「森ガール」や「オリーブ少女」偽装系は、見た目と本心にギャップがあるため、「こんなはずでは……」というとまどいを、しばしば相手にあたえます(私の知り合いも、結局離婚してしまいました)。

「森ガール」や「オリーブ少女」がすべて、「少女性で草食男子を狩るタイプ」だと私は思いません。しかし、あどけなさを演出することでモテようとする「オリーブ少女もどき」も、たしかにいたのです。そういう「もどき」と、男性の「俺がなんとかしてやらなくちゃ」感にまったくはたらきかけない小泉今日子は、ちがう世界の住人です。

■小泉今日子が「森ガール」になるとき

 それでは、「もどき」でない「オリーブ少女」は、小泉今日子の「同志」といえるでしょうか?

※小泉今日子とオリーブ少女と森ガール(下)につづく

※助川幸逸郎氏の連載「小泉今日子になる方法」をまとめた『小泉今日子はなぜいつも旬なのか』(朝日新書)が発売されました

(注1)酒井順子『オリーブの罠』(講談社現代新書 2014)など。
(注2)水越真紀他編著『ゼロ年代の音楽 ビッチフォーク編』(河出書房新社 2011)

助川 幸逸郎(すけがわ・こういちろう)
1967年生まれ。著述家・日本文学研究者。横浜市立大学・東海大学などで非常勤講師。文学、映画、ファッションといった多様なコンテンツを、斬新な切り口で相互に関わらせ、前例のないタイプの著述・講演活動を展開している。主な著書に『文学理論の冒険』(東海大学出版会)、『光源氏になってはいけない』『謎の村上春樹』(以上、プレジデント社)など

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